17 / 29
17.寝たふり
しおりを挟む
ゆっくりと目を開けると、辺りは薄暗くなっていて自分があのまま寝てしまっていたことに気付いた。
「あ……私、寝ちゃったんだ…」
私はぽつりと独り言を呟き、薄暗くなっている室内に視線を巡らせた。
そして思い出したくなかったあの場面が再び頭の奥に蘇り、表情が曇っていく。
再び私が落ち込んでいると、突然扉の奥からトントンとノック音が響いた。
私は思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…いるかな…?」
遠くから響いて来るのはバルの声だった。
(バル…?…なんで……)
バルが来ていることに動揺してしまい、私はあたふたと慌て始めた。
今はバルとは会いたくない気持ちであったので、咄嗟に寝たふりをすることを思いついた。
きっと私の反応が無ければ帰るだろうとは思っていたが、もしもの時の為に寝たふりをしてやり過ごそうと考えた。
案の定暫くすると扉は開き、コツコツと室内に足音が響き渡ってきた。
その足音は私の方へと近づいて来て、近くなるにつれて私の鼓動も比例する様にバクバクと激しく鳴り始める。
そしてその足音は私がいるベッドの前でピタッと止まった。
私は息を殺すかの様に必死に寝たふりを続けていた。
(お願い…気付かれませんように…)
私が必死にそう願っていると、温かいものが額の辺りに触れた。
思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…寝ているの…?」
「………」
バルは静かに問いかける。
だけど私は寝たふりをしているのでその声には答えない。
暫くすると、バルは私の髪を柔らかく撫で始めた。
頭を撫でられるのはとても気持ちが良いけど、今は少しでも早く傍から離れて欲しいと願ってしまう。
「シロの寝顔は本当に可愛いね…」
バルの優しい声が響いて来る。
こんな時でも可愛いと言われるとなんだか照れてしまう。
私は必死に表情に出さない様に耐えていた。
「……シロが起きるまでここに居ようかな…」
「………」
(うそでしょ…?お願い…今は帰って……)
バルは愉しそうな口調で独り言を呟いていたが、私はその言葉に動揺してしまう。
今でさえこんなにも心臓がバクバクしているのに、一体いつまで私は我慢すればいいのだろう。
「ねぇ…シロはいつまで寝たふりをしているつもりなのかな…?」
突然耳元で囁かれ、私はぞくっと鳥肌が立つのを感じた。
(……気付かれてる…!?)
私の鼓動は焦りから更に早くなる。
そんな私の気持ちとは裏腹にバルは指を私の唇に滑らせる。
その感触を感じると、体を小さく震わせてしまう。
「目を開けないつもりなら…、この可愛い唇を奪ってしまおうかな…」
バルはクスッと小さく笑い、私の耳元で囁いて来る。
私は『どうしよう…どうしよう…!』と必死に考えていた。
寝たふりをしていることは完全にバレている。
それにこの嫌な緊張から解放されたいという気持ちもあった。
(……もうバレているのなら…寝たふりをする意味なんて…ないよね…)
私は決心すると、ゆっくりと目を開いた。
すると目の前にバルの顔があり、目が合った瞬間…バルは「おはよう、シロ」と微笑んでいた。
「あ……私、寝ちゃったんだ…」
私はぽつりと独り言を呟き、薄暗くなっている室内に視線を巡らせた。
そして思い出したくなかったあの場面が再び頭の奥に蘇り、表情が曇っていく。
再び私が落ち込んでいると、突然扉の奥からトントンとノック音が響いた。
私は思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…いるかな…?」
遠くから響いて来るのはバルの声だった。
(バル…?…なんで……)
バルが来ていることに動揺してしまい、私はあたふたと慌て始めた。
今はバルとは会いたくない気持ちであったので、咄嗟に寝たふりをすることを思いついた。
きっと私の反応が無ければ帰るだろうとは思っていたが、もしもの時の為に寝たふりをしてやり過ごそうと考えた。
案の定暫くすると扉は開き、コツコツと室内に足音が響き渡ってきた。
その足音は私の方へと近づいて来て、近くなるにつれて私の鼓動も比例する様にバクバクと激しく鳴り始める。
そしてその足音は私がいるベッドの前でピタッと止まった。
私は息を殺すかの様に必死に寝たふりを続けていた。
(お願い…気付かれませんように…)
私が必死にそう願っていると、温かいものが額の辺りに触れた。
思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…寝ているの…?」
「………」
バルは静かに問いかける。
だけど私は寝たふりをしているのでその声には答えない。
暫くすると、バルは私の髪を柔らかく撫で始めた。
頭を撫でられるのはとても気持ちが良いけど、今は少しでも早く傍から離れて欲しいと願ってしまう。
「シロの寝顔は本当に可愛いね…」
バルの優しい声が響いて来る。
こんな時でも可愛いと言われるとなんだか照れてしまう。
私は必死に表情に出さない様に耐えていた。
「……シロが起きるまでここに居ようかな…」
「………」
(うそでしょ…?お願い…今は帰って……)
バルは愉しそうな口調で独り言を呟いていたが、私はその言葉に動揺してしまう。
今でさえこんなにも心臓がバクバクしているのに、一体いつまで私は我慢すればいいのだろう。
「ねぇ…シロはいつまで寝たふりをしているつもりなのかな…?」
突然耳元で囁かれ、私はぞくっと鳥肌が立つのを感じた。
(……気付かれてる…!?)
私の鼓動は焦りから更に早くなる。
そんな私の気持ちとは裏腹にバルは指を私の唇に滑らせる。
その感触を感じると、体を小さく震わせてしまう。
「目を開けないつもりなら…、この可愛い唇を奪ってしまおうかな…」
バルはクスッと小さく笑い、私の耳元で囁いて来る。
私は『どうしよう…どうしよう…!』と必死に考えていた。
寝たふりをしていることは完全にバレている。
それにこの嫌な緊張から解放されたいという気持ちもあった。
(……もうバレているのなら…寝たふりをする意味なんて…ないよね…)
私は決心すると、ゆっくりと目を開いた。
すると目の前にバルの顔があり、目が合った瞬間…バルは「おはよう、シロ」と微笑んでいた。
0
お気に入りに追加
1,132
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる