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17.寝たふり
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ゆっくりと目を開けると、辺りは薄暗くなっていて自分があのまま寝てしまっていたことに気付いた。
「あ……私、寝ちゃったんだ…」
私はぽつりと独り言を呟き、薄暗くなっている室内に視線を巡らせた。
そして思い出したくなかったあの場面が再び頭の奥に蘇り、表情が曇っていく。
再び私が落ち込んでいると、突然扉の奥からトントンとノック音が響いた。
私は思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…いるかな…?」
遠くから響いて来るのはバルの声だった。
(バル…?…なんで……)
バルが来ていることに動揺してしまい、私はあたふたと慌て始めた。
今はバルとは会いたくない気持ちであったので、咄嗟に寝たふりをすることを思いついた。
きっと私の反応が無ければ帰るだろうとは思っていたが、もしもの時の為に寝たふりをしてやり過ごそうと考えた。
案の定暫くすると扉は開き、コツコツと室内に足音が響き渡ってきた。
その足音は私の方へと近づいて来て、近くなるにつれて私の鼓動も比例する様にバクバクと激しく鳴り始める。
そしてその足音は私がいるベッドの前でピタッと止まった。
私は息を殺すかの様に必死に寝たふりを続けていた。
(お願い…気付かれませんように…)
私が必死にそう願っていると、温かいものが額の辺りに触れた。
思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…寝ているの…?」
「………」
バルは静かに問いかける。
だけど私は寝たふりをしているのでその声には答えない。
暫くすると、バルは私の髪を柔らかく撫で始めた。
頭を撫でられるのはとても気持ちが良いけど、今は少しでも早く傍から離れて欲しいと願ってしまう。
「シロの寝顔は本当に可愛いね…」
バルの優しい声が響いて来る。
こんな時でも可愛いと言われるとなんだか照れてしまう。
私は必死に表情に出さない様に耐えていた。
「……シロが起きるまでここに居ようかな…」
「………」
(うそでしょ…?お願い…今は帰って……)
バルは愉しそうな口調で独り言を呟いていたが、私はその言葉に動揺してしまう。
今でさえこんなにも心臓がバクバクしているのに、一体いつまで私は我慢すればいいのだろう。
「ねぇ…シロはいつまで寝たふりをしているつもりなのかな…?」
突然耳元で囁かれ、私はぞくっと鳥肌が立つのを感じた。
(……気付かれてる…!?)
私の鼓動は焦りから更に早くなる。
そんな私の気持ちとは裏腹にバルは指を私の唇に滑らせる。
その感触を感じると、体を小さく震わせてしまう。
「目を開けないつもりなら…、この可愛い唇を奪ってしまおうかな…」
バルはクスッと小さく笑い、私の耳元で囁いて来る。
私は『どうしよう…どうしよう…!』と必死に考えていた。
寝たふりをしていることは完全にバレている。
それにこの嫌な緊張から解放されたいという気持ちもあった。
(……もうバレているのなら…寝たふりをする意味なんて…ないよね…)
私は決心すると、ゆっくりと目を開いた。
すると目の前にバルの顔があり、目が合った瞬間…バルは「おはよう、シロ」と微笑んでいた。
「あ……私、寝ちゃったんだ…」
私はぽつりと独り言を呟き、薄暗くなっている室内に視線を巡らせた。
そして思い出したくなかったあの場面が再び頭の奥に蘇り、表情が曇っていく。
再び私が落ち込んでいると、突然扉の奥からトントンとノック音が響いた。
私は思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…いるかな…?」
遠くから響いて来るのはバルの声だった。
(バル…?…なんで……)
バルが来ていることに動揺してしまい、私はあたふたと慌て始めた。
今はバルとは会いたくない気持ちであったので、咄嗟に寝たふりをすることを思いついた。
きっと私の反応が無ければ帰るだろうとは思っていたが、もしもの時の為に寝たふりをしてやり過ごそうと考えた。
案の定暫くすると扉は開き、コツコツと室内に足音が響き渡ってきた。
その足音は私の方へと近づいて来て、近くなるにつれて私の鼓動も比例する様にバクバクと激しく鳴り始める。
そしてその足音は私がいるベッドの前でピタッと止まった。
私は息を殺すかの様に必死に寝たふりを続けていた。
(お願い…気付かれませんように…)
私が必死にそう願っていると、温かいものが額の辺りに触れた。
思わずびくっと体を震わせてしまう。
「シロ…寝ているの…?」
「………」
バルは静かに問いかける。
だけど私は寝たふりをしているのでその声には答えない。
暫くすると、バルは私の髪を柔らかく撫で始めた。
頭を撫でられるのはとても気持ちが良いけど、今は少しでも早く傍から離れて欲しいと願ってしまう。
「シロの寝顔は本当に可愛いね…」
バルの優しい声が響いて来る。
こんな時でも可愛いと言われるとなんだか照れてしまう。
私は必死に表情に出さない様に耐えていた。
「……シロが起きるまでここに居ようかな…」
「………」
(うそでしょ…?お願い…今は帰って……)
バルは愉しそうな口調で独り言を呟いていたが、私はその言葉に動揺してしまう。
今でさえこんなにも心臓がバクバクしているのに、一体いつまで私は我慢すればいいのだろう。
「ねぇ…シロはいつまで寝たふりをしているつもりなのかな…?」
突然耳元で囁かれ、私はぞくっと鳥肌が立つのを感じた。
(……気付かれてる…!?)
私の鼓動は焦りから更に早くなる。
そんな私の気持ちとは裏腹にバルは指を私の唇に滑らせる。
その感触を感じると、体を小さく震わせてしまう。
「目を開けないつもりなら…、この可愛い唇を奪ってしまおうかな…」
バルはクスッと小さく笑い、私の耳元で囁いて来る。
私は『どうしよう…どうしよう…!』と必死に考えていた。
寝たふりをしていることは完全にバレている。
それにこの嫌な緊張から解放されたいという気持ちもあった。
(……もうバレているのなら…寝たふりをする意味なんて…ないよね…)
私は決心すると、ゆっくりと目を開いた。
すると目の前にバルの顔があり、目が合った瞬間…バルは「おはよう、シロ」と微笑んでいた。
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