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お城妖精になる
小さな翅の妖精さん
しおりを挟む「うわぁー!!」
先に叫んだのはリアムだった。
「何てことしてくれてんだ!!」
男の下敷きになっているウェディングドレスを引っ張る。
どけどけ、と言わんばかりに、流血している男を睨む。
ポタリ……。
純白のドレスの上に男の赤い血が滴り落ちた。
「うぉーーー!きさまぁー!!何やらかしてくれてんのじゃー!!」
ここまで苦労して運んで来た唯一の財産(窃盗品である)が、それが今、ただのボロきれのゴミと化そうとしている。
気が狂いそうだ。
残業して居眠りしてミシンで爪まで縫った。
痛みに耐え、悲鳴をこらえ、汚さぬよう細心の注意を払い仕上げたドレスだ。
売れば1年は楽に暮らしていけるだけの金になるはずのもの。
ポタリ……ポタポタ……
男の顎から流れ落ちる血の滴
「どけ!このボンクラがっ!!」
もう、お気づきだろうか、環境が性格を作るのか、はたまたそれは生まれついてのものなのか。
リアムは、満月の明け方にツユ草の花から生まれた植物系の妖精だ。
妖精の翅の大きさはその妖力と比例する。
リアムの青い翅は身体の半分もない。
妖力の低い妖精は社会から必要とされず、粗悪な環境下での無期限(死ぬまで)の労働を強いられている。
妖力を上げる方法は、貰うか、買うかしかないのだが、実質無料の妖力など存在しない。
もし、リアムが薔薇や百合や蘭の妖精に生まれていれば、とりまく世界は大きく違ったことだろう。
薔薇の妖精なら、貴族の屋敷で屋敷妖精として働けるだろう。
地位も高く賃金も良いから、どんどん妖力を買うことが出来、出世の道が開けている。
しかし、リアムは名もなき雑草の妖精として生まれた。
そして、これまで品性や道徳といった概念のない場所で生きてきた。
むしろ、生きるために真逆を進んだのだ。
でなければとっくの昔に道端で野垂れ死んでいる。
しかし、それを差し引いても
まぁまぁのクソ妖精であることに間違いはない。
ドン、と男を突き飛ばしドレスを救出。
「落ちるか? これ、これおちねぇな!」
ドレスには赤い水玉模様が出来ている。
「弁償しやがれ!」
顔面血だらけの男を前に凄んでいる。
これはもう、ヤ◯ザである。
男からすれば、ただの当たり屋で間違いない。
*****(ФωФ){ 誰がクソニャ)
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