🐱山猫ヨル先生の妖(あやかし)薬学医術之覚書~外伝は椿と半妖の初恋

蟻の背中

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初恋と命運

千寿(ソジュ)

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ぐっちゅぐっちゅと激しい後ろと前の同時攻撃にもう頭の中はぐっちゃぐちゃ。

今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。

「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」

顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。

与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。

「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」

室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。

「だってだって」

ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。

「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」


「そんなはずがない!!」

クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。

「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」

彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。

「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」

「……うんめいじゃ…なくても?」

彼の言葉の意味を考える。

(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)

「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」

揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。

ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。

、えぐえぐっ、のにぃ』

ーークライスとユジンが結婚する。

それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。

悪役令息ぼくはそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。

それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。

「俺はユジンではなく、お前と結婚する」

僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。



「ぼくと、くらいすが、けっこん……」

そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、

「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」

え?  

左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。

僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。

「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」

最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。

「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」

ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。

「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」

「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」

クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。



でも本当にいいの?

「僕は、」

『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』

「いらないこだけど……」

言いかけた口が彼の唇に塞がれた。


「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
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