文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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最終話 君は輝く

さよなら愛しき人

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「あっちの世界は平和なんだな」

スラオシャが微笑んだ。
なんだろう、なんで、彼が笑うんだろう。


「……まぁ、ここよりは」

いや、全然平和だろ。

あんたに剣を突きつけられるようなこともないし、弓が雨みたいに降ってくることもない。
日常的に死を感じることもないし。

誰かを好きで、失恋して、やさぐれて、

そんな自由が程々にあって。


あなたが(シミズが?)、誰かを傷つけることをしなくてすむ世界。

「ポテトチップっていうお菓子があってさ」

「美味いのか?どんな味だ?」

「じゃがいもを薄ーく切って、油であげるの、そんで塩がふってある、噛むとサクッていってパリッと割れるんだ、あー!食べたい!!」


「そうだ、今度ここでも作ってみよう」

「俺も食べてみたい、バルフに着いたら作ってくれ」

「わかった」





そんな会話をしたから、スーパーでポテチ買いだめしてる夢なんか、見たんだよね。

馬車が停まった。

荷台の幕が開き、アデル王子の顔が見えた。
その背後にスラオシャが姿勢良く立っていた。

「国王がお待ちです」

「ミーナを1人にしたくない……」

死んだように棺につっぷしていた王女が、弱々しく言った。


「私が側にいます」

なんで、そう言ったのか自分でもわからない、
見ず知らずのご遺体と一緒にいるなんて、きっといい気分ではないのに。

「さぁ、手を……」

スラオシャは王女の手をとり、しっかり支えながら立たせた。

「少しの間、お願いします」

王女が私に頭を下げた。

私も無言でお辞儀をかえす。



友達を亡くすというのは、
どんな気持ちなんだろう?


もし、本当にこのまま向こうの世界に戻れなくて、ハナと会えなくて、そのうちハナのことも先輩のことも忘れられるんだろうか……?

忘れていいんだろうか?

いや、忘れたいなら忘れられると思う。

だけど忘れたくないなら、
少しでもさっきみたいに心が疼くなら、
きっとその痛みは消えないんだろう。



王女が戻ってきて、私は荷台から降りた。


この世界は昼が長い。

あまりにも長くて、もて余してしまう。



私と行き違いで、ユージンが荷台に上がって行くのが見えた。



なんとなく荷馬車の近くまで戻り、中の気配に耳を傾けた。


「私はもう巫女じゃない」



そんな会話が聞こえてきて、
私はその場から逃げるように


遠ざかった。



また、失恋て……

ウケるで……マジで。





作業用BGM  I HATE YOU ― WOODZ
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