文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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最終話 君は輝く

巫女じゃない私の居場所

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「王女のことをハナって呼んでた」


スラオシャの顔をたっぷり10秒くらいは眺めたと思う。

「ハナって、私が呼んでたって?」

短いヒラヒラが制服のスカートのことだとしたら?

「凄く気になる夢だった。それに本当にそこにいたみたいな……」

スラオシャは向こうの世界へ行ったってこと?

「超リアル」

「リアル?どういう意味だ?」

私は飛ばされてきて、でも、スラオシャは元々ここの人で、だから、えっ?
ちょっ、わかんない?!

「どのくらいいた?」
「どのくらい?」
「あっちの世界で何してた?劇の練習してた?」
「あっちの世界?とは?」

スラオシャの様子をみると、彼はほんとに少しだけあっちの世界の夢を見ただけみたい。

「実は私は、あんたが見たっていう夢の世界にいたんだよ、それが何の因果か罰ゲームか、この世界に飛ばされてきてさ」

「あの世界が実在するのか……」

スラオシャが口元に手を当て驚いている。
よっぽどリアルな夢だったんだな。

私が今言ったこと、素直に信じて納得してるっぽい。

「ハナは王女っていうか、あっちの世界で友達で、……だった人で、ハナって名前の人」

「髪や目の色が違ったが、王女にそっくりだった」

「だよね、私も最初は驚いた」

「俺に似たやつもいたのか?」
「うん、まぁ」

「……その、そいつは」
「シミズっていうんだ」
「そうか、そのシミズってやつは……お前がいた世界でも、その……」
「なに?」


「人を殺しているのか?」

スラオシャは自分の腰に視線を落とす。

「まさか!!」

「……そうか、じゃあ、何をしているんだ?」

「何って……学生?」

私、シミズのことは全然知らないんだよ。
ごめん。

「がくせい?」

「学校行って、あっ、学校って勉強するとこ、勉強したり、塾いったり……」

「じゅく?」

「大学ってところにいくために、勉強するところ?」

「勉強ばかりするんだな」

「もちろん勉強以外にも、学校の帰りに友達と遊んだり、ごはん食べたり」

ハナと過ごした放課後が思い出された。
いつもハナと一緒だった。


心が、疼いた。



「ともだちと遊ぶ?」

「スラオシャにだって、友達いるでしょ?」

「俺は……小さい頃兵士に売られて……」

スラオシャは昔の記憶を辿っているようだった。
友達、いなかったのかな。

すぐに名前が出ないなら。

私にはいた。

忘れたくても忘れられない、
友達、


ハナ。



作業用BGM  THUNDEROUS ― STRAYKIDZS
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