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最終話 君は輝く
帰りたい場所がある
しおりを挟む目覚めると目の前には大きな縦に長い箱があって、それは黒い布に覆われていた。
ああ……そうだった。
私はバルフの王女様と、そのお友達の棺と一緒に、馬車に揺られていたんだった。
疲れていたのと、馬車の揺れが適度に心地よくていつのまにか寝てしまったみたい。
よりによって、ポテチの夢を見るなんて。
また思い出す、酷く困難なこの現実を。
あんな夢を見たのは、スラオシャのせいだ、絶対そうなんだから。
少し前に、私たちはバルフへ向けて出発した。
幌つきの荷馬車の荷台に、王女と私とそして棺。
ユージンが荷馬車を走らせて、スラオシャは馬でその後をついてきていた。
水辺で一度休憩をとった。
私は荷台から降りて、外の空気を吸っていた。
さすがに棺と一緒に、つまりそのなかに仏さんがいるってことじゃん?
しかも、まったく見も知らない人だし。
ずっといるのが苦痛じゃないといえば、嘘だし、正直ユージンの隣にいたかった。
ユージンは馬車から馬を外し、水をあげてる。
なんとなくその背中が人を拒んでいるような気がして、近寄れない。
こんなとき、空気を読みすぎちゃうくらい、読んじゃう自分がだいぶウザイ、と思う。
空気を読まず、「ユージンなにしてんのー?」とかバカっぽく話せたら、どんだけ生きるのが楽だったろうか。
もしかしたら……もっと違う世界線があったかもしれない?
「なにぼんやりしてる?」
「びっくりしたっ!」
相変わらず気配を消してくるやつ。
急に声かけてくんな。
「別に、ただちょっと……気が滅入ってるっていうか、ご遺体と一緒だし」
フワフワとやわらかい風が吹いていた。
緑色の短い草がさわさわと揺れ動いている。
スラオシャの髪も揺れて、青白い額が見える。
「夢を見たんだ」
「えっ、夢?あんた寝てたときあったっけ?」
「一瞬、馬上で」
「馬の上で寝れるなんて、器用なやつ」
「変な服を着てた」
「変な服って?誰が?」
「俺もお前も、あと王女も。紺色の服で、お前と王女は、ヒラヒラした短い丈の布を巻いていた」
「……」
「知らない国だった。見たこともないものだらけだった」
それって、もしかして……そんなわけないよ、スラオシャは私の世界なんか見たことないんだから、夢に出てくるなんてあるわけない。
人って見たことのないものは、夢で見ないって話じゃん。
「王女のことを、ハナって呼んでいた」
へっ?
それって、
どういうこと?
作業用BGM 存在だけで ― WONSTEIN
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