文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3幕 巫女は秘密を抱いたままで

守られた巫女の秘密

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「ダリアン、お前の巫女としての職務を今後一切解くとする」

ダリアンは呆然とした表情で王を見上げた。

「何故、そんな顔をする?」

「……」

「それがお前の望みなのだろう?」

「……はい」


イルファルハンとの国境付近に駐留していたバルフ軍は、撤収の準備を始めた。



ダリアンは荷馬車へ戻り、ミーナの棺の前でぼんやりと座り込んでいた。

「これからどうするんだ?」

ぼんやりしていたダリアンは、突然の声に驚き顔を上げた。

荷台へと乗り込んできたユージンは入り口辺りに座りダリアンを見つめた。

「ミーナと……ミーナを送って、それから……」

ユージンはダリアンの言葉に耳を傾け、追い付かない気持ちを察するかのようにただ頷いた。

「わたし、もう巫女じゃない」


ダリアンの大きな瞳から涙が溢れ、ぽとり、ぽとりと落ち続けた。

生まれた時から王女であり巫女だった。

民の幸せと国の安寧を常に願い続ける役目は、誇りであり、国が栄え民が健やかであることがダリアンの喜びであった。

魔神が去るまでは……、

その重い秘密を抱え、嘘と恐怖に苛まれる日々に押し潰されそうになりながら毎日を耐え、それでも人々のために祈るしかなかった。

何処に逃げることも出来ず。

イルファルハンへ行くことで、どこかその重責から逃れられると考えていたのかも知れない。

その愚かな選択のせいで、大切な友人を亡くしてしまった。

もっと早く真実を打ち明けるべきだった。

巫女の職を解かれ、ただの王女に戻ったところで、ダリアンの心が軽くなるなどありえない。

むしろ以前にもまして重く鬱いでいた。

未来など考える余裕などあるわけがない。


ユージンはダリアンの側へ近付き、震える肩を抱いた。

「何も考えるな」

ダリアンはユージンの胸に顔を埋め、ただ泣いた。

自分の無力さ、悔しさに

過去へ戻れたらいいのに、戻る?
どこへ戻るの?
アデルが馬から落ちたとき?
それとも私が巫女の命を受けた6歳のとき?

戻ったところで何も変わらない、きっと同じ事をして、同じ運命をたどるだけだろう。


だって、戻るのは私。

そう、愚かな私なんだから。


例え魔神がいたとしても、こんな愚かな私がちゃんと使えるわけがない。



むしろ、早々にそんな強い畏れを手放して良かったのかもしれない。



作業用BGM  good boy gone bad―TXT
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