文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3幕 巫女は秘密を抱いたままで

巫女の帰還

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王のゲルでは、スラオシャが事の次第をあらかた報告していた。


「さようか……異国の巫女が本当にやってくれたのか」
「はい、真に巫女であったようです」
「なんとも……」

「父上、姉上を連れて参りました」

ダリアンはうつむいたまま、アデルの後ろについている。

「バルフの巫女よ……」
「父上!!」

ダリアンは王の言葉を遮り、地面にひれ伏した。

「私は巫女ではありませんでした、それはずっと以前から」

「何を言いだす、やめなさい」

王が周りの兵へ目配せをすると、ゲルにいた兵士達は自ずとゲルの外へ出ていった。

最後にスラオシャが出ていくと、ゲルの中には王とアデル王子、そしてダリアンだけが残った。

「アデル……」
「けれど……」

アデルは不本意そうに王を見るが、王の気迫に圧されゲルから出ていった。


「父上、私は告白しなければならないことがあります……今まで恐れ多くただ怖く、自分が可愛くもあって、黙ってやり過ごすしかないと、そう思って昨日まで……偽りの巫女を演じてまいりました」

「ダリアン……」

「申し上げます、私は王とバルフの国民を欺き、国を裏切った罪人でございます!」

ダリアンは自ら額を地面へ押し付けた。

「この国にリュトンはありません、なぜなら……私が、ジンを解放してしまったからです……」

「ダリアン……もう良い」

「どうか、罰して下さい、さもないと私は……」

「お前には……今まで大変な心労を背負わせてしまっていたな」

「父上……」

「皆まで言うな、知っておる」

ダリアンは驚いて顔を上げた。

「妃が、亡くなる前に私へ全てを話してくれたのだ」

「えっ……?」

「馬から落ちて死にかけたアデルを、ジンの力を持って助けたこと、そのときのジンとの契約がジンを解放すること……」

「母上が……」

「それ以来、この国を守っていたジンが消えたということ」

「そこまで……」

「重い秘密をずっと背負わせて、すまなかった」



「……私の役目もこれで失くなりました。国の、なんの役にもたたない無力な巫女がバルフにいる意味はありません」

王は椅子から立ち上がり、ダリアンの側へ歩み寄った。

「そもそも、自分達の国は自分等の力で守るもの、祈ったり何かに守って貰うなんぞ、間違っていたのだ」

王はダリアンの傍らへしゃがみ、彼女の肩に手をおいた。

「けれど……」

「良い、もう良いのだ……」


ダリアンは父に抱かれ、その胸で泣き崩れた。


「どうか、今までどうり、国の平和と民の幸せをバルフで祈ってくれ」

「私にそんな資格などありません。民に嘘をつき続けることも」

「ダリアン……いや、バルフの巫女よ」


王は立ち上がりダリアンをまんじりと見下ろしていたのだが、暫くして意を決したかのように言葉を発した。


「バルフの巫女よ、汝に命を下す」



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