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第3章 聖なる巫女の最後の願い
涙の海に船はない
しおりを挟む「大丈夫だ。もう終わった」
ユージンが背中をさすってくれる。
「うん……うううっ、ひっ」
恥ずかしいから、泣き止みたいんだけど……嗚咽が止まらない。
「ツキには、いつも驚かされるなぁ。ここに、こんなタイミングで現れるんだから」
「うん……ひぃーっう、くっ」
「ツキは凄く勇敢だ」
「あぁーーー、っくう、ううう、ユぅぅージーーぃン……あっ、会いた、かあっっったぁぁぁ!」
良かった、ほんとに良かった。
また、ユージンに会えた。
「俺も、……会いたかった」
俺も、会いたかった?!
ほんとに?
顔をあげると、優しい笑顔で私を見るユージンがいた。
あのいつもの目尻に皺がよる、明るい笑顔。
「ツキ……」
「うん」
「ひどい顔だ」
「えっ、あっ」
そうだ、涙と鼻水でえらいことになっているに違いない。
「これを」
目の前にまっさらな白い布が差し出された。
艶々と光っている……シルク?かな。
「……」
「あなたのお陰で最悪の事態を避けられました」
ズズズっ。
差し出されたハンカチで遠慮なしに鼻をかませてもらう。
ハンカチの主は、近くで見ると本当にめちゃくそ綺麗な顔をしている。
サラサラの黒髪に、凛々しい眉毛。
そのすぐ下にあるダークグリーンの、くりくりした大きな瞳。
マジで、漫画から出てきた人。
「異国の巫女様」
なっ、なんて?
今、なんて?
いこくのみこ、さま!!
って、わたくしのこと??
この世界に来て、一番素晴らしく丁寧な呼ばれ方をして頂いたような気がする。
「うわぁーーーー!!」
驚いた、突然王女様が地べたに突っ伏して泣き始めた。
「王女様、どうされましたか?」
スラオシャが王女様に寄り添うように屈んだ。
「うわーーーー!!」
大きな声で人目も憚らず、さっきの私みたい……いや、違う。
私とは違う……きっと。
もっと、心の底から噴き出してくる……叫び……悲鳴のような。
「ダリアン王女は、侍女を亡くしました」
王子様が、気の毒そうな目で王女様を見た。
「私のせいです!!私の!!!」
王女様が叫んだ。
「あなたのせいでは……」
王子様は王女様に寄り添い彼女の背中に手をおいた。
「ギルディール……」
王女様が顔を上げ、彼の腕にすがった。
「ミーナを、連れて帰りたい……戻るって約束したの……一緒に戻るって」
「……すぐに手配しよう」
作業用BGM PENTAGON―twenty twenty
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