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第3章 聖なる巫女の最後の願い
何時でも何処でも何度でも!
しおりを挟む「出でよ!我が魔神イフリート!!」
ランプからシュウっという音がする。
冷たい風が渦を巻きながら空へ立ち上っていく。小さなつむじ風は刑場を移動しながら、大きな竜巻となり、やがて先程の燃えるドラゴンの姿に変わる。
「願いは決まったか?」
イフリートの熱で、刑場の気温が一気に上がる。
「私の願いは……」
「さあ、早く言え。世界の破滅か?」
「私の願いは……その前にちょっと待って、確認事項なんだけど」
「……なんだ?」
「願い事って何個まで?」
アラジンのランプは3回までだけど。
「何度でも、お前の欲望が多ければ多いほど私の力も強くなる」
何度でも?!まじか。
「私じゃなくてもあなたの持ち主になれる?」
「私の持ち主は……お前だけだ」
「私が死んでも?」
「お前が死んだら、私はまた長い眠りにつく」
国王が悔しそうにイフリートを見上げている。
「残念ですが、ランプを奪ってもあなたの物にはならないようです。例え私を殺してもです」
「……」
「彼らを自由に、そして今後バルフに一切の干渉をしないこと、それを約束してください」
国王がフッと微笑んだ。
「……よかろう。何もない未開のバルフなどさして欲しくもない」
国王はイフリートを再び見上げた。
「そなたは美しいな。邪神そのものだ」
そう言い残すと、くるりと向きを変え足早に去って行く。
兵士達もその後を追う。
王子がユージンに向けた剣をおろし、ユージンもまた、王子へ向けていた剣を捨てた。
「異国の巫女様。もう、良いでしょう?あれを早くおさめてはくれないか。熱くてたまらない」
王子が額の汗を手の甲で拭いながら私に目を向けた。
「イフリート、ランプへ戻って……」
「おいおい、またこのパターンか……もう…………」
イフリートがランプへ戻ると、安堵の息が漏れみんなの緊張が解けるのがわかった。
「良かった……」
「大丈夫か」
腰が抜けてその場にヘタりこんだ私の肩にユージンの大きな手がのった。
「ははは。大丈夫……」
「やっぱりツキは幸運の女神だ」
自分の顔が歪むのがわかる。
歯をくいしばって耐えると、ますます歪んで変な顔になる。
いろんな感情でグチャグチャだった。
ユージンの顔を見たら、それらが一気に堰を切ったように溢れて止まらなくなってしまう。
「ありがとう、よくやったな」
ユージンに抱き締められ、その温かい胸の中で私は子供みたいに泣いた。
馬鹿みたいにワーワーと声をあげて。
作業用BGM YOOA―bon voage
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