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第3章 聖なる巫女の最後の願い
今って、私が主役じゃない?!
しおりを挟む「そのランプを寄越しなさい」
言うと思った。
目が合った瞬間から「それは私のものだっ!」っていう心の声、全開だったもん。
「私は異世界から来た巫女です、このランプをあなたに差し上げるためにここへ来ました」
私の返事に、国王の目は輝き口角が吊り上がった。国王がランプへと手を伸ばして来たので、さっとランプを抱き締め隠す。
「けれど、それには条件があります」
「条件だと?お前のような巫女風情が我に条件を申すというのか?」
国王は空に向かってひとしきり笑うと兵士に目配せをした。
兵士の1人が私の肩を掴んだ。
「いいからさっさと寄越さぬか」
「触るな」
すかさずユージンが兵士の腕を捻り上げ蹴飛ばした。兵士は2、3歩よろめき国王の前へ転がり倒れる。他の兵士達が剣を構えにじりよった。
王子が国王の前へ進み、ユージンへ剣の切っ先を向けた。
「動くな」
ユージンもまた、王子に切っ先を向ける。
二人は互いに刃を向け、にらみ合う。
場の緊張感に冷や汗が流れ、背中を伝った。
頑張れ私。
「国王様、まず、私達の身の安全をお約束して頂きたいです。それと、今後バルフには一切の干渉、武力行使をしないこと。さもなければ先程の怪物に、この国全て焼き払わせます」
「……フフフ」
国王がまた笑う。
「このランプは、人を選ぶようです。誰でも扱えるというわけではありません」
「我にそんな心配は無用だ」
国王が自信満々に微笑んだ。
「では、1度お試し下さい。国王様」
私はランプを差し出した。
「条件を受け入れて下さるなら、扱い方を……」
国王が私の手からランプを奪った。
まだ、話してる途中だったでしょうが!
「さぁ、出でよ魔神イフリート。現れ我の願いを叶えよ!」
国王は高々とランプを空へ掲げた。
その場にいる皆が、恐々とした視線をランプと国王に向けた。
また、あの恐ろしい怪物が現れるのか?!
皆がそんな顔で見ているなか、刑場は静寂と緊張に包まれたまま、暫し時が止まったようになる。
「……出でよ、魔神イフリート!!」
国王はさっきよりも張りのある大きな声で、もう1度ランプを掲げた。
「……」
刑場は変わらず静寂に包まれている。
すっかり夜があけた青空に、鳥の囀りが平和そうに響いた。
「……」
やっぱり、スラオシャの言った通りなんだ。
このランプは私を選んで、私の世界からついてきていた。
あまり確信はなかったけど、本当にそうらしい。
良かった、これで皆を助けられそう。
「お返し下さい」
私は国王の手からランプを奪い返した。
「出でよ!我が魔神イフリート!!」
作業用BGM MCND―NANANA
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