105 / 117
第3章 聖なる巫女の最後の願い
今って、私が主役じゃない?!
しおりを挟む「そのランプを寄越しなさい」
言うと思った。
目が合った瞬間から「それは私のものだっ!」っていう心の声、全開だったもん。
「私は異世界から来た巫女です、このランプをあなたに差し上げるためにここへ来ました」
私の返事に、国王の目は輝き口角が吊り上がった。国王がランプへと手を伸ばして来たので、さっとランプを抱き締め隠す。
「けれど、それには条件があります」
「条件だと?お前のような巫女風情が我に条件を申すというのか?」
国王は空に向かってひとしきり笑うと兵士に目配せをした。
兵士の1人が私の肩を掴んだ。
「いいからさっさと寄越さぬか」
「触るな」
すかさずユージンが兵士の腕を捻り上げ蹴飛ばした。兵士は2、3歩よろめき国王の前へ転がり倒れる。他の兵士達が剣を構えにじりよった。
王子が国王の前へ進み、ユージンへ剣の切っ先を向けた。
「動くな」
ユージンもまた、王子に切っ先を向ける。
二人は互いに刃を向け、にらみ合う。
場の緊張感に冷や汗が流れ、背中を伝った。
頑張れ私。
「国王様、まず、私達の身の安全をお約束して頂きたいです。それと、今後バルフには一切の干渉、武力行使をしないこと。さもなければ先程の怪物に、この国全て焼き払わせます」
「……フフフ」
国王がまた笑う。
「このランプは、人を選ぶようです。誰でも扱えるというわけではありません」
「我にそんな心配は無用だ」
国王が自信満々に微笑んだ。
「では、1度お試し下さい。国王様」
私はランプを差し出した。
「条件を受け入れて下さるなら、扱い方を……」
国王が私の手からランプを奪った。
まだ、話してる途中だったでしょうが!
「さぁ、出でよ魔神イフリート。現れ我の願いを叶えよ!」
国王は高々とランプを空へ掲げた。
その場にいる皆が、恐々とした視線をランプと国王に向けた。
また、あの恐ろしい怪物が現れるのか?!
皆がそんな顔で見ているなか、刑場は静寂と緊張に包まれたまま、暫し時が止まったようになる。
「……出でよ、魔神イフリート!!」
国王はさっきよりも張りのある大きな声で、もう1度ランプを掲げた。
「……」
刑場は変わらず静寂に包まれている。
すっかり夜があけた青空に、鳥の囀りが平和そうに響いた。
「……」
やっぱり、スラオシャの言った通りなんだ。
このランプは私を選んで、私の世界からついてきていた。
あまり確信はなかったけど、本当にそうらしい。
良かった、これで皆を助けられそう。
「お返し下さい」
私は国王の手からランプを奪い返した。
「出でよ!我が魔神イフリート!!」
作業用BGM MCND―NANANA
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる