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第3章 聖なる巫女の最後の願い
屍からゾンビ
しおりを挟む「うわぁ……」
なんか凄いの出てきたな。
これが魔神イフリート……なんだ。
私が呼び出したの?!
イフリートが羽ばたく度に、熱い風がぐわっと吹き付けてくるし、火の粉も落ちてくる。
あちこちで小さな火事が起こっていた。
「あっつ!!」
おでこに熱いものが引っ付いて、慌てて払いのける。
あぶなっ、火傷するじゃん!!
王女様とユージンに対峙したイフリートは、大きく口を開いた。
ちょっ、ちょっ、ちょっと待って、口から炎とか吐くつもりじゃないよね??
「ちょっと!!」
イフリートが私の方へ頭を向ける。
「何をするつもりなの?」
「お前の望みを叶える」
「望みって?」
「二人を消す」
それって言葉どうり、物理的に消すってこと?
いやいやいや、待てよ。
「私、そんなこと望んでない」
「今さら良い子ぶるな、お前の本心はわかっている」
「そんなの本心じゃない」
「こんな世界、みんな消えてしまえばいいと思っただろう?」
「それは……本気でそう思ったわけじゃない……一瞬、ほんの一瞬思っただけだし」
「この世界も、お前のいた世界も、綺麗に消し去ってやる」
イフリートが笑う。
パチパチと火花を飛ばしながら、心底楽しそうに。
邪悪だ……
人では無い、人を遥かに越える力を持つもの、それがいとも簡単に人を凌駕出来るという恐ろしさ。
あまりの絶対的な力の前で、本能的にわき起こる恐怖に身がすくむ。
「ツキ!」
ユージンの声がした。
ユージンが何か言いたげにこちらを見ている。
兵士の盾を頭上に持ち上げ、王女様に火の粉が落ちないように守っている。
自分に落ちてくる火の粉にはお構い無しに。
王女様はユージンの後ろでぼんやりとイフリートを見上げていた。
また、チリチリと胸が焼ける。
ハナは何でも持っている。
何の苦労も努力もしないで、すぐに何でも手に入れてしまう。
そんなの不公平だ……。
悔しい……。
黒い石の上に火の粉が落ちては消えていく。
人の命もこんなふうに儚くて危ういんだ。
「ツキ!」
ふいに肩を掴まれた。
視線を上げると、スラオシャが鬼の形相で立っていた。
「スラ……」
スラオシャが私の正面に片ヒザをついて屈んだ。
「あいつと話すな!あいつは邪神だぞ!」
「邪神?」
「お前の心の弱味につけこんでるんだ、早くあいつを引っ込めろ」
やっぱり……私が望んだから出てきたのか。
今まで、散々助けを求めたのに出てこなかったのは、単なる魔神じゃなかったから。
「ツキ!」
「……」
スラオシャの真っ直ぐな視線をまともに見られず、私はまた下をむく。
「何を考えている?」
スラオシャの手にある剣の先から血が滴り落ちた。
何が違うのか?
この人だって、他者を傷つけているじゃないか。
作業用BGM SuperM―Tiger Inside
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