文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3章 聖なる巫女の最後の願い

モブキャラにもほどがある!

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ラクシュの下からなんとか足を引き抜こうとするんだけど、重くて全然だめだった。

「ラクシュ、ラクシュ、大丈夫? 」

ラクシュの背中をさすると、少しだけ首をもたげ非難がまししい目で(たぶん)私の方を見た。

「ごめん、私のせいだね。私みたいな乗馬素人があなたみたいな立派な馬を乗りこなせる訳がないのに……」

兵士が何人か、こっちへ向かってくるのが見える。
その向こうで、ユージンとスラオシャが兵士たちと剣を交え始めていた。

王女様を庇いながら。

助けて……
私はここにいるよ……

叫んだところで、二人は王女様を守るのに忙しそうだし、助けに来てはくれないだろう。
兵士達がもうそこまでやって来ている。

「誰もお前なんか助けない」

唐突にそんな声が耳に入った。

「誰?」

近くにそんなことを言う人はいないのに。
まさか、とは思うけど……

「ラクシュ?あんたなの?」

ラクシュはもう首を上げない。
荒い息を吐きながらぐったりしている。

「私を呼べ」
「えっ?」

また、だ。
声のした方を見ても、誰もいない。
ただ、ランプが転がっているだけ。

ランプ……が?

「まさか、とは思うけど……?」
「誰もお前のことなんか心配しない」
「まさか……ランプの魔神?」
「今、お前は存在すら忘れられてる」
「……それは」
「お前が犠牲になることはない」
「……」
「今度こそ、お前は死ぬ」
「やだよ、怖いこと言わないで……」
「私はお前をずっと見てきた。何故、いつもお前ばかりが苦労する?」
「それは……何も出来ないから」
「何故、いつも奪われてばかりなんだ?」
「……取られるようなもの始めから何も持ってない」
「そうか?もう忘れたのか。金が奪われ、ランプが奪われ、そして今はここまで苦労して来た理由が奪われた」

私はユージンを目で追った。
今、ユージンは王女様の手を取って走っている。

私がここまで来た理由……。

ユージンの腕の中にいるのは王女様だ。

王女様の顔が今、初めて見えた。
その顔を見て思わず息が止まった。

えっ?! 嘘でしょ??  なんで???

「ここに、ハ……ナが?」


ハナが王女様なの?!
王女様がハナ……?

なんかわかんないけど、頭がこんがらがるよ?

シミズのそっくりさんがいるんだから、ハナのそっくりさんがいてもおかしくないっていうことなの?
そうだ、そうかもしれない。

「おい、動くな!!」

兵士が私の鼻先に剣を突きつけた。

動けって言われても、動けないから。

「また、奪われるのか?奪われたなら、奪い返せばいい」
「うるさい」
「なんだと?」

兵士が私の顔を覗きこんだ。

「私の名を呼べ、そうすればお前の欲しいものはなんでも手に入る」

私は転がっているランプに手を伸ばした。



作業用BGM  SEVENTEEN―24H
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