文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3章 聖なる巫女の最後の願い

刑場の鼓動

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「何がどうなってる? 期限まではまだあるはずじゃないか!」
「暴動が起きる事態……」

スラオシャが鋭い目でギロリと私を睨んだ。
別に茶化してもいないし、冗談で言った訳でもなかったけど……。

彼のまとう空気が一瞬で変わった。

スラオシャは、今上ってきた階段を滑るように駆け下りていく。
私も慌ててその後を追いかけた。

階段を下りきると、スラオシャが急に立ち止まったから、危うくぶつかりそうになる。

「ねぇ、どうする気なの!」
「王女を救う」
「どうやって?」
「それを今考えている……」

4列に並んだ兵士らが、入り口へと向かうのが見えた。
兵士達は小太鼓や旗を持ち、等間隔を保ちながら進んでいく。
列の最後は大太鼓を運ぶ馬車。
その後ろに大きな刀を持った黒い服の男が歩いてくる。

「ツキ、一人で馬に乗れるか?」
「え?」
「これを……」

スラオシャが、自分の外套を外し私に羽織らせた。

「上手くいくかどうか、お前次第だ」

スラオシャから、一通りの計画を聞いて、今、だいぶ足が震えている。

私はスラオシャに言われた通り、バルフで1番足の早い馬、ラクシュ(スラオシャが言ってた)
のところに戻った。

「ラクシュ、ちょっと屈んでくれない?」

馬の座高が高すぎる。

「無理か……せいのっ!」

ラクシュのタテガミを掴んでジャンプする。

「ちょっ、動かないで!」

飛び乗ろうとすると、ラクシュが動いてまったく乗れない、を数回繰り返す。

踏み台になるような物があればいいのに、一応辺りを見回すけど、やっぱりそんなものはない。

そうしている間に刑場で太鼓の音が鳴り始めた。まずい、早くしなきゃ。
太鼓が鳴り始めたら、ラクシュに乗って入って来いってスラオシャに言われてる。

「ラクシュさん、お願いします。そのままじっとしてて下さい」

私はラクシュを見上げ真剣に頼む。
拝むように頼む。
懇願。
なんとなく、ラクシュ「わかったよ」という目をしたような気がする。

「よし、行くよ!」

私は、少し後ろから助走を付けてラクシュに飛び乗った。
よじ登るようにしてようやくその背に乗る。
そして手綱を握り、スラオシャに教えられたように、ラクシュの腹を蹴った。

「やぁ!」

えっ、ちょっと!!

ラクシュ、全然動いてくれない!

「ねぇ、お願いします!」

太鼓のリズムが徐々に早まっていく。

「やぁっ!!」

1歩も動かない。

「走って、お願い!!」




作業用BGM  Dremcatcher―BOCA
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