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第3章 聖なる巫女の最後の願い
誰にでもすべきことがある
しおりを挟む刑場は長方形の形をしていて、高い石積の壁で囲まれていた。
外からは中が見えないようになっている。
入り口の門が開け放たれていて、兵士達が足早に出入りしていた。
あそこから中の様子が伺えそう。
馬から下りて、すぐにそこへ向かおうとした私は、またしてもスラオシャに止められる。
「そっちは駄目だ」
確かに、落ち着いて考えればそりゃそうなのだ。招待されているわけでもないんだから。
見つかれば、追い返されるだけだ。
「どうして、ここまで来たの?」
ふと、スラオシャらしからぬ親切さに違和感を覚える。この人はユージンを助けてくれる?
そんな訳なくないか?
だって、理由がない。
「ぞんざいに扱うなと、国王に命令されてる」
「命令だから仕方なくってことだね」
「何を言ってもいいが、勝手に動かれると命の保証は出来ない」
「ユージンを助ける気なんか、少しもない」
「お前の面倒だけでもこうやって手がかかるのに、他の奴の面倒まで要求するな」
ほら、ね。
悔しくて涙が出そうになる。
今、頼れるのはあんただけなのに……。
壁の周りをぐるりと見渡したスラオシャが手招きをする。
それでも、今は彼の後をついていくしかない。
私はなんて無力なんだろう……。
この世界に来て何度もそう思ったけど、今ほどそれを感じた場面はない。
シミズのせいにするのは違うかもだけど、せめて「剣と武術の達人な侍女」とか、そういう設定を付けておいてくれれば良かったのに、と思う。
兵士達が出入りする門を離れ、壁際に沿って歩いて行くと上へと続く階段が現れた。
迷わず階段を上がっていくスラオシャの後を、私もついていく。
兵士の姿はまったくない。
みんな準備に忙しいのだろう。
階段を上がりきる手前で、身を屈めたスラオシャに、頭を下げるよう合図された。
そこからは、刑場内が一望できた。
サッカーグラウンドのような形と広さだけど、グラウンドのピッチは緑の芝じゃなく黒い石畳だ。四方は客席だろうか、石が階段状に積まれている。
「ユージン!!」
やっぱりユージンだ。
縄でまかれ、石の床に座らされている。
背後には槍を持った兵士がいる。
良かった、まだ間に合う。
「ダリアン王女、王女が何故?」
遠くて顔は良く見えないけど、確かにユージンの隣に、同じように縄で巻かれた女の人がいる。
あれが、王女様なの?
えっ、なんで??
作業用BGM ONEUS―TO BE OR NOT TO BE
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