文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

文字の大きさ
上 下
97 / 117
第3章 聖なる巫女の最後の願い

誰にでもすべきことがある

しおりを挟む



刑場は長方形の形をしていて、高い石積の壁で囲まれていた。
外からは中が見えないようになっている。
入り口の門が開け放たれていて、兵士達が足早に出入りしていた。
あそこから中の様子が伺えそう。
馬から下りて、すぐにそこへ向かおうとした私は、またしてもスラオシャに止められる。

「そっちは駄目だ」

確かに、落ち着いて考えればそりゃそうなのだ。招待されているわけでもないんだから。
見つかれば、追い返されるだけだ。

「どうして、ここまで来たの?」

ふと、スラオシャらしからぬ親切さに違和感を覚える。この人はユージンを助けてくれる?
そんな訳なくないか?
だって、理由がない。

「ぞんざいに扱うなと、国王に命令されてる」
「命令だから仕方なくってことだね」
「何を言ってもいいが、勝手に動かれると命の保証は出来ない」
「ユージンを助ける気なんか、少しもない」
「お前の面倒だけでもこうやって手がかかるのに、他の奴の面倒まで要求するな」

ほら、ね。
悔しくて涙が出そうになる。
今、頼れるのはあんただけなのに……。

壁の周りをぐるりと見渡したスラオシャが手招きをする。

それでも、今は彼の後をついていくしかない。
私はなんて無力なんだろう……。
この世界に来て何度もそう思ったけど、今ほどそれを感じた場面はない。
シミズのせいにするのは違うかもだけど、せめて「剣と武術の達人な侍女」とか、そういう設定を付けておいてくれれば良かったのに、と思う。

兵士達が出入りする門を離れ、壁際に沿って歩いて行くと上へと続く階段が現れた。
迷わず階段を上がっていくスラオシャの後を、私もついていく。
兵士の姿はまったくない。
みんな準備に忙しいのだろう。

階段を上がりきる手前で、身を屈めたスラオシャに、頭を下げるよう合図された。

そこからは、刑場内が一望できた。

サッカーグラウンドのような形と広さだけど、グラウンドのピッチは緑の芝じゃなく黒い石畳だ。四方は客席だろうか、石が階段状に積まれている。

「ユージン!!」

やっぱりユージンだ。
縄でまかれ、石の床に座らされている。
背後には槍を持った兵士がいる。
良かった、まだ間に合う。

「ダリアン王女、王女が何故?」

遠くて顔は良く見えないけど、確かにユージンの隣に、同じように縄で巻かれた女の人がいる。

あれが、王女様なの?

えっ、なんで??



作業用BGM  ONEUS―TO BE OR NOT TO BE
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

立花家へようこそ!

由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・―――― これは、内気な私が成長していく物語。 親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。

処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!

ミズメ
恋愛
侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。 その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。 「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることになってしまう。 王座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。 「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」 ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……? ●他サイトにも掲載しています。

人の身にして精霊王

山外大河
ファンタジー
 正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。 主人公最強系です。 厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。 小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。

処理中です...