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第3章 聖なる巫女の最後の願い
嫌な予感はよく当たる?
しおりを挟む「こんな早朝に、国王様自ら刑の執行をなされるなど珍しいことですね。余程の悪党か反逆者でない限りありえない話では?」
「確かに急なことではありますが、珍しいことではありません」
「……そうなんですね」
「あのっ、刑場はどちらですか?どこで行われますか?」
偉いおじさんが怪訝そうに私を見た。
「こちらは、バルフの巫女です」
スラオシャが、私の代わりに名乗ってくれる。
「刑場は、北の塔あたりですが……立ち入りはご遠慮頂きたい」
北の塔って、どっちだろう。
私はまず白々と明けてきた東の空を見上げ、そこから北へ目を向けた。
確かに円柱の塔がひとつ、その方角に見える。
「はい、承知しています。お忙しいなか有り難うございました」
スラオシャの声が遠くで聞こえる。
凄く凄く嫌な予感がする。
これが胸騒ぎっていうんだろうか。
「おい、聞いてなかったか? 一般人の見学はお断りだって」
「……行かなきゃ」
「えっ?」
ユージんじゃないよね??
そうじゃないといい、そう思う反面、絶対にそうだという確信みたいなものが、どんどん大きくなってきた。
そして、いてもたってもいられなくなる。
「……確かめてくる」
歩き始めた私の腕をスラオシャが掴んだ。
「おいっ!」
「!」
「処刑なんか見たって、胸糞悪くなるだけだぞ!」
「離して、早く行かなきゃ駄目なの」
「説明しろ、どうして行きたいんだ!」
スラオシャが私の前に立ちはだかり、行く手を塞いだ。
どうしてって、処刑されるのがユージンかも知れないから。
「ユージンなの」
「えっ?!」
「処刑されるのは、きっと」
「待てよ、どうしてわかる?」
「だって、私達だから、献上品を盗んだの」
「はぁ?!」
「成り行きでそうなっただけで、盗むつもりだった訳じゃない、だから、とにかく早く行かなきゃいけない」
スラオシャを避けて、私は走った。
北の塔を目指して。
あそこまでどのくらいある?
間に合う?
心臓が爆発しそうなくらいドキドキ言ってる。
足が思うように動かない、もつれそうでもどかしい。
まるで、夢の中で走っているみたいに足が重い。
「ツキ!」
後ろを見ると馬に乗ったスラオシャが、こちらへ向かってくるところだった。
「乗れ!」
私は差し出されたスラオシャの腕を掴んだ。
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