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第3章 聖なる巫女の最後の願い
シスコンと上司好き、と
しおりを挟む王子様に告白して振られる。
多分これが、ゲームでいうシナリオの分岐点。
初めて会う王子様に告白とか意味がわからないし、しかも振られるっていうね。
振られるのわかってるのに、告白しなくない?って話なんだけど。
シミズの脚本だと、そうやって侍女は王子を好きなふりをして王女を助けることになってる。
細かい状況はわからない、そういう大雑把な設定だけがあった。
宮廷内の大きな噴水の前で待っていると、スラオシャが大きな黒い馬を引いてきた。
「うわ、かっこよ」
たてがみは長くサラサラで艶々 。
国一番の駿馬って言ってた。
今まで乗った他の馬よりも一回りは大きくて足が長い。
これなら、本当にあっという間にイルファンに着きそうだ。
「スラオシャ」
スラオシャを読んだのは、さっき王様の隣にいた、儚げな美少年だ。
「アデル様」
スラオシャが一礼する。
私もちょっとだけお辞儀。
「必ず姉上を連れ帰ってくれ」
「承知しました」
「異国の巫女、ツキ、と言ったかな」
「はい、ツキです」
「礼を言います。この困難な状況で自ら進んでイルファンへ向かうと言うのは、勇気と覚悟がいりますよね」
ええと、改めてそう言われると、なんかもう命懸けでやるんだよね?って、めっちゃ重い圧かけられた感じがして、ビビっちゃうじゃん。
「姉上を頼みます」
「はい……」
出来る限りのことは、やらせて頂きます。
「私は挙兵し、国の境で待ちます」
「はい、王子」
「2人の無事を祈ります」
スラオシャがいつのまにか騎乗していた。
私は、馬上から差し出されたスラオシャの手を掴んだ。
「うわっ、高い」
地上が遠く見える。
脚立の上にまたがってる感覚。
「それでは行って参ります」
王子様に見送られ、私達はバルフを後にした。
ひたすら、ひたすら、走る。
代わり映えのしない沙漠の景色。
真っ赤な夕映えのなかを突っ走って、日が暮れても走ってた。
もうね、ほんと、少し休まない?って言いたげに何度か振り替えって、スラオシャを見たんだけど全然だよね。
もう、いい加減にして!となった頃に、ようやく馬から下ろしてもらえた。
スラオシャが小さなナイフで皮を剥いた林檎をよこした。
ナイフが刺さったままだ。
空に浮かぶ月と同じ丸さ。
噛じると、サクッと甘い果汁がたくさん出てきた。お腹が空いてるから美味しい。
「あなたさ、王女様とはどういう関係?」
皮を剥かず、林檎をかじっていたスラオシャがむせた。
「はっ?」
「好きなの?」
「馬鹿か、ありえない」
「だって、こんなに必死になっちゃって。アデル王子?の護衛してたほうがよっぽど楽じゃん。ぶっちゃけ王女様、あなたにはそんなに期待してないと思うけど」
作業用BGM ATEEZ―Inception
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