文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3章 聖なる巫女の最後の願い

あなたの願いを私が叶える?

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「巫女を一人で使いに出すわけにはいかぬからな」

スラオシャが隣で期待を込めた目をして、私を見ているのを感じる。
ある意味利害の一致で、ここまで連れてきて貰ったわけだけど、この先は別でもいいと思うんだな。

だって、今度は後ろから刺されるかもしれないじゃん。

「王様、もしお供を付けて頂くなら、彼以外でお願いしたいです」

王様は片眉を上げ首を傾げた。

「……それは何故か?彼は武術に優れ頭もキレる、私が認める数少ない家臣の1人であるが」
「彼は……忠誠心が強すぎます。そのせいで私は死にかけました!」

少し盛っちゃった、つい勢いで……。

死にかけたのは私の落ち度もあってのことだけどさ。
でも普通にね、ここまで連れてきてくれたら、そうはならなかったはず。

「なるほど、確かに彼は実直すぎて、時々融通がきかないところもある」

スラオシャ、王様にそう言われて下を向く。

「スラオシャ、何か言うことはあるか?」
「……王女様を守ることが私の務めで使命でしたから、それを最優先に考えた結果です」

スラオシャは王様に向かって堂々と答えた。

「巫女よ、今後そなたに危害を与えぬよう、この者に命ずれば良いか。他の者を付けることも、もちろん厭わないが」

「……まぁ、そうですね、それなら」
「では、スラオシャ、その旨良く承知し、巫女と共に王女を連れて帰れ」
「承知しました」

スラオシャは頭を下げた。

「バルフで一番の駿馬を用意しよう。急げば今日の夜半には着くだろう」



「何故、唐突にあんな嘘を?」

王の間を後にして、長い回廊を歩いている。
スラオシャが厳しい顔で私を睨んだ。

「嘘?嘘って?」
「魔神を使って、王女を救ってくるって、あんたランプを扱えないじゃないか」
「……それは、やってみないとわからないじゃん、だから嘘とは言い切れないし」
「詭弁だな」
「ちょっと、あなたは私に感謝しなきゃいけない立場でしょ。王女付の任を解くって言われたときの顔。で、何も言えなかったじゃん」
「命令には逆らえない……」
「必ず戻るって、約束したんでしょ?王女様と、とりあえず戻ることは出来るんだから。私が断っていたら、約束を守れなかったでしょうね」

スラオシャは私を一瞥して、そして前を向いて歩いていく。
私も、それ以上は何も話さなかった。



魔神を出せない私が、どうやって王女様を救うのか。
その方法、私だっていい加減に嘘をついたわけじゃない。

今の状況がどうあれ、これがシミズの脚本に倣って進むなら、侍女①(つまり私かな?)は魔神を呼び出すために、あることをしなきゃならない。

そう、それは……


『隣の国の王子へ告白すること』 

なのである。

そして


しっかりフラれること。



作業用BGM  woods―Buck
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