文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3章 聖なる巫女の最後の願い

目覚めてもまだここだって

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寒くて目が覚めた。
空に丸い月が浮かんでた。
いやまだ、丸くないのかな、乱視だからよく見えないや。

はぁ。
状況はひとつも変わってない。
喉も渇いたし、お腹もすいた。
試しに少し歩いてみようかな、痛かった背中や腰がだいぶ楽になっているように思う。
歩くと言ってもよ、手足を縛られているから、芋虫の如く横向きで進んでいくだけ。
少し横向きに進み、何かが頭にぶつかった。
ごろりと転がって反対を向くと、ランプ様が鎮座されていらっしゃった。
「なんなの、役立たずの上に私の頭をぶつわけ?」

「おい、そこに誰かいるのか?」

崖の上から誰かが叫んでいる。

「います!いますよ!たすけて!!」

私は嬉しくて本当にほっとして、もうこれで大丈夫、死なないって思ったわけよ。
なのに、下りてきたやつの顔を見て気分は複雑っていうか、大混乱というか。

「あっ」
「おっ」

私とシミズは、実に数十秒はたっぷり向かい合ったと思う。

「早く、これをほどいてほしいんだけど」
「あっ、おっ、そうだな」

シミズが手足の縄を切ってくれて、やっと手足を自由に伸ばせたんだけど、長い時間同じ姿勢だったからか、やっぱりちょっと背中が痛かった。

「なんで、ここにいる?」
「そっちこそ」

シミズは黙って私を引っ張り起こした。

「あっ、痛い、いたっ。もっと優しくしてよね?」

立ちあがったらあちこち痛くて、これほんとに全身打撲で全治2週間てところじゃない?
という自己診断。

「で、なんで戻ったわけ?」
「この辺で、ランプを落とした」
「あっ、ああ。ランプ!ランプね!!」

私はランプを拾い上げた。

「これのこと?私のランプだけどね。誰かさんに奪われたんだけど、このように無事に戻ってきたわけですよ」
「おっ、そうか……やっぱり持ち主からは離れないんだな」
「ん?それはどういうこと?」
「昔から、リュトンの巫女は1人、つまり、このランプが持ち主を選んでいるとしたら、それはあんただってことだ」
「もしもよ、この中に魔神がいるんだったら、早く出て来て助けて欲しかった、ほんとに、切に」

ランプに耳を近付けて聞き耳をたててみたけど、何かがいる気配なんかない。
もちろん、蓋をあけてみたって全然普通のランプですからね。

「で、さ。あんた!よくも私を沙漠のど真ん中に置いてってわよね!しかも、これっ、これを見て!髪の毛、バサッと!」

私はくくってある髪の毛の先をシミズに見せた。

「それは意図したわけじゃない。すまなかった」
「なに、やけに素直じゃない。シミズらしくない」
「スラオシャだ。俺の名はスラオシャ」
「スラオシャ?」



作業用BGM   Woodz―Pool
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