文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

十四夜の月

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「大丈夫……こ……この……ぐらい、大丈夫」

ダリアンはミーナの頭を膝にのせると、首からの出血を止めようと必死にそこを押さえた。
ミーナは僅かに開いた目でダリアンを見つめていたが、その瞳からは輝きが消え失せやがて闇にのまれてしまった。
そして別れを告げることもないまま終には静かに息絶えたのだった。

アリアナはギルディールの前に立つと彼の前に剣を差し出した。彼がその剣の柄を掴もうと手を伸ばした瞬間、剣は地面へと落下した。
一呼吸置き、拾い上げようと身を屈めたギルディールの頬にアリアナの容赦のない平手が当たった。
ギルディールは血の滲む唇をかみ地面に膝をつき平伏する。

「我を本気で怒らせぬことだ」
「……はい」

ギルディールが屈服したことで気を取り直したのか、アリアナは次にダリアンの傍に立ち彼女を見下ろした。
そしてゆっくりと屈んで彼女に寄り添うと、その手をダリアンの背に当てた。

「お前の世話をやく者がいなくなったな。けれど心配するでない、もうすぐ身の回りの事などどうでもよくなる。それにまたいずれ近いうちに会えるだろう」

ダリアンはアリアナの言葉には無反応で、うわ言のようにミーナの名を呼び続けている。

「この者を風の塔に繋げ」

アリアナは立ち上がり、そう言い残すと馬車へ向かった。

「おや。我を睨んでおるそやつは何者か?」

アリアナがユージンに目を留めた。

「……その目、似たような目を知っているぞ」

アリアナは兵士から松明を受けとると、彼の傍に寄り顔を照らした。

「ギルディール、この者は誰だ?」
「誰でもありません、明日の朝には処刑される者です、お気になさらず」

アリアナはミーナを抱くダリアンとユージンとを交互に眺め、口角を上げ微笑んだ。

「……おもしろい。その処刑に我も立ち会おう。席を設けよ。それにあの巫女も連れて参れ」
「わざわざそのような場所にいらっしゃらずとも……」
「はぁ」

アリアナが深く長い息を吐いた。

「今宵は十四夜、星は月光の傍では見えずらいものだな」

アリアナは空を見上げ、そして改めてユージンを眺める。

「お前に名はあるか?」
「答えれば立派な墓標でも下さるのでしょうか?」

フフっ、とアリアナが笑った。

「遠い昔に消えた星によく似ていること」

アリアナが馬車へ乗り込もうと踏み台に片足を置いたとき、後からダリアンが追いかけてきてその手を掴んだ。

「待って、ミーナを返して!」




作業用BGM  BTS―Yours Eyes Tell
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