文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

罪の代償を払う者

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「まさか……兄上なのか?」

ギルディールの剣の切っ先が下がった。
身体中から全ての力が抜けたかのように、だらりと腕を下ろし呆然とユージンを凝視している。

「人違いでございましょう。私のような者が王子様と縁者のわけがありません」
「ちょっと、何でそんなこと」

ダリアンがユージンの腕を掴んだ。

「ほら、これが証拠……?!」

ユージンの指に先程まであったはずの指輪がない。
怪訝な顔で見上げるダリアンへ、ユージンは淀みのない笑みで答える。

「何が証拠なんだ?」
「私にも何のことか……」

ユージンは両手を上げ降参の意思を示した。

「捕らえよ」

ギルディールがユージンへ再び剣を向けた。

「そのまま処刑場へ連れていけ、日の出とともに刑を執行する」
「ギルディール王子、それはなりません!」

ダリアンが縄をかけようとする兵士の前に立ち塞がった。

「彼は本当に正真正銘本物のサウル王子です!」
「ダリアン王女、これ以上邪魔をするとあなたでも容赦しない」

ギルディールがダリアンの腕を掴みユージンの前からどかした。


「王子!国王様が参られます!!」

息を切らせて走ってきた兵士がギルディールの足許に控え早口で伝えた。

「国王が?」

その直後、漆黒の馬2頭がひく、きらびやかな馬車が彼らのすぐ脇に停まった。
御者が踏み台を置くと国王は優雅に下車し一同を見渡した。

ギルディールは頭を下げアリアナを迎える。
ユージンは縄をかけられ、地面に押し付けられた。

「ギルディール、そなたこの数日何をコソコソしているのだ?」

アリアナはダリアンを見つけると優雅に笑った。

「何故、バルフの巫女がここに?侍女と共に牢に入っているはずではないか?」
「申し訳けございません」

ギルディールは頭を下げたまま答えた。

「まだ残りの日はあったが……」

アリアナはギルディールの手から剣を奪うとダリアンの正面に立った。

「致し方なかろう」
「国王?」

ダリアンは、微笑むアリアナを睨み返した。
初対面ではこの妖艶な威圧感にいささか怯んだが、今は同じ目線で真っ直ぐに見返す事が出来た。
やるのならやりなさい。
ダリアンは覚悟を決めアリアナの前に立った。
しかし、アリアナはくるりと向きを変えダリアンから二歩先で剣を振り上げた。

「!!」

アリアナが振り下ろした剣の先でミーナが倒れた。アリアナはダリアンではなく侍女のミーナに刃を向けたのだ。

「いやぁっ!!」

ダリアンの悲痛な叫び声が静寂な夜に響き渡った。



作業用BGM VERIVERY―Thunder
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