文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

ふたつの星が出会うとき

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「結構よ、1人で歩けるもの」

ダリアンはユージンの手を払った。
ユージンは払われた手をヒラヒラと空に振りながら先に行く。

「ぎゃっ!」

ダリアンが短い悲鳴を上げた。

「王女様!大丈夫ですか?!」
「何かを踏んだわ、ぐにゃっとして……ミーナ、かわりに何か見て……」
「……」

ミーナは屈んでダリアンの足下を見て顔を上げた。

「いいえ、何も言わないでなんとなくわかった……」
「馬糞だ」
「だからっ!!言わないでっていったでしょう!!」

ダリアンはユージンの背中を本気で叩いた。

「だから注意しろと言いたかったのに」

「だったらちゃんと言ってよ!それにもう、牢に入れる前にいちいち履き物を奪うのは何のためなの!!頭にくる!!」

ダリアンは足の裏を必死に地面の草に擦り付けた。

「王女様……」
「大丈夫、大丈夫よ」

ダリアンは胸に手を当て何回か深呼吸をした。

「このくらいは人生経験のひとつとして、あったっていいわ」

ユージンが横腹を押さえ声を殺して笑っている。

「笑わないで……」

ダリアンは奥歯を噛みしめながらユージンを睨んだ。

「さっさと行って」

ダリアンはユージンの背中を押した。

3人は馬舎までやってくると出来るだけ静かに馬を連れ出していく。

「いたぞ!!」

3人の背後から兵士の叫ぶ声が聞こえた。
松明の火があちこちから集まり明るい塊が一帯を照らす。

「早く乗れ」

ユージンが2人を促したとき、風を切って飛んできた矢がダリアンのすぐ側の地面に突き刺さった。続けて何本もの矢が弧を描いて飛んでくる。そのうちのひと矢が馬の尻に刺さり、痛みに暴れた馬がミーナを蹴り飛ばした。

「ミーナ!」

ダリアンは飛ばされ地面に倒れたミーナのもとへ駆け寄った。名前を呼んでも返事がなく頭を打ったのかぐったりと横たわっている。

「やめて!」

ダリアンが兵士達に向かい叫んだ。
3人は兵士達に囲まれ彼らの鼻先には何本もの剣の先が向けられた。

「王女様……」

ミーナが体を起こした。

「大丈夫?」
「はい、私は大丈夫です……」

そこへ、兵士の輪をかき分け芦毛の馬が走り込んできた。兵士達は数歩下がり道を明け渡す。
馬から下りた男は剣を抜き真っ直ぐユージンに向かって歩いてきた。

「穏便に納めようとしているのに、何故騒ぎを起こす」
「穏便に?彼を処刑することが?!」
「ダリアン王女、あなたは他人のことを憂慮している場合か?」
「彼が誰か知ってるの?」
「知る必要はない、ただの盗人だ」
「ギルディール、彼をよく見て」


ギルディールはあらためてユージンへ目を向けた。その顔がみるみる強張っていくのは傍目からも分かるほどだった。

「まさか……」




作業用BGM Lee Suhyun―In Your Time
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