80 / 117
第2幕 聖なる巫女の千一夜
王族の証
しおりを挟む「なんだ、罪人の癖に人を呼びつけるとは生意気な!」
牢番がドカドカとユージンの前にやって来た。
ダリアンは柵に顔を近づけ隣の牢の様子を伺う。
松明の明かりがユージンを照らした。
「すまないが大事な物をそこに落とした、拾ってくれないか?」
ユージンは柵の間から腕を伸ばし、その下の石畳を牢番に示してみせた。
「大事な物だと?どうせ明日にはいらなくなるんだ、ほっとけ」
「ほら、そこだ指輪を落とした」
「指輪?」
牢番は松明でデコボコとした石畳を照らし腰を屈めた。
「赤い紅玉の石がついているやつだ」
牢番は石の間に赤い輝きを放つ金の指輪を見つけた。
「これか……」
牢番がそれを拾い上げようと、手を伸ばした時、ユージンはその右手を掴み自分の牢に引き入れ捻りあげた。
「何をするんだ!ううっ、やめろ!!」
牢番は柵に背中を当てたまま悲鳴はあげる。
「鍵を隣の牢へ渡せ」
「なんだとー、ひぃー」
腕の関節をせめられ、牢番は更に悲鳴を上げた。
「わ、わ、わかった、待て」
牢番は松明を投げ捨てると、腰から鍵の束を外した。ダリアンは柵から手を伸ばしその鍵を奪い取った。
「私が」
ダリアンがミーナに鍵を渡すと、ミーナは錠前の鍵穴にそれを差し込んだ。
牢から出たミーナは次にユージンの牢の鍵を素早く開けた。
牢から出たダリアンは牢番の腰から短刀を抜き取り、その首に刃を当てがう。
「動かないで」
ユージンは牢番をダリアンに任せることにし、彼の手を解いて外へ出た。そして肩を押さえて呻く牢番を自分がいた場所へ押し入れ鍵を閉めてしまった。
「少し体験するといい。改善点がわかるだろう」
「こら!お前ら!!ううっ……」
牢番は右手を押さえ苦痛に顔を歪ませた。
ユージンは松明を拾いあげ、その火で石畳を照らし落とした指輪を探す。
石の間に光る小さな輝きを見つけると、それを拾い指にはめた。
両翼の獅子はユージンの指の上で厳かに煌めき誇らしく天を見上げている。
「お似合いだわ、玉座に戻ればいいのに」
ダリアンはそれを見て思ったままを口にした。
ユージンはそれを鼻で笑う。
「これは友達の形見、俺のじゃない」
道すがら何人かの兵士を片付けながら牢の外へ出ると、すっかり日は落ちて辺りは暗くなっていた。ユージンは松明を捨て3人は月明かりの下を歩いていく。
「こっちだ」
ユージンは壁沿いの暗い道を、勝手知ったる我が家、とでもいうふうにどんどん歩いていく。
「良く知っているのね、お友達から地図でももらった?」
ダリアンがそんな嫌味を言うとユージンは苦笑しダリアンの手を取った。
「足許に気をつけて」
作業用BGM 1THE9―Bud Guy
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
デッドエンド済み負け犬令嬢、隣国で冒険者にジョブチェンジします
古森真朝
ファンタジー
乙女ゲームなのに、大河ドラマも真っ青の重厚シナリオが話題の『エトワール・クロニクル』(通称エトクロ)。友人から勧められてあっさりハマった『わたし』は、気の毒すぎるライバル令嬢が救われるエンディングを探して延々とやり込みを続けていた……が、なぜか気が付いたらキャラクター本人に憑依トリップしてしまう。
しかも時間軸は、ライバルが婚約破棄&追放&死亡というエンディングを迎えた後。馬車ごと崖から落ちたところを、たまたま通りがかった冒険者たちに助けられたらしい。家なし、資金なし、ついでに得意だったはずの魔法はほぼすべて使用不可能。そんな状況を見かねた若手冒険者チームのリーダー・ショウに勧められ、ひとまず名前をイブマリーと改めて近くの町まで行ってみることになる。
しかしそんな中、道すがらに出くわしたモンスターとの戦闘にて、唯一残っていた生得魔法【ギフト】が思いがけない万能っぷりを発揮。ついでに神話級のレア幻獣になつかれたり、解けないはずの呪いを解いてしまったりと珍道中を続ける中、追放されてきた実家の方から何やら陰謀の気配が漂ってきて――
「もうわたし、理不尽はコリゴリだから! 楽しい余生のジャマするんなら、覚悟してもらいましょうか!!」
長すぎる余生、というか異世界ライフを、自由に楽しく過ごせるか。元・負け犬令嬢第二の人生の幕が、いま切って落とされた!
※エブリスタ様、カクヨム様、小説になろう様で並行連載中です。皆様の応援のおかげで第一部を書き切り、第二部に突入いたしました!
引き続き楽しんでいただけるように努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる