78 / 117
第2幕 聖なる巫女の千一夜
告白は牢の中で
しおりを挟む「ここで大人しくしていろ、明日には処刑だ」
「だったら今晩くらい、もっとましな所で過ごしたい」
「ふざけた事を言うな盗人が」
「そもそも林檎を盗んだだけで死罪か、滅茶苦茶だな」
「黙れ」
ガシャンっ、と牢の扉が閉まる音が聞こえた。
「酷い臭いだ」
隣の牢の主がぼやくのを聞きダリアンとミーナは顔を見合せた。
「そこにいるのはユージン?」
ダリアンが声をかけた。
「ダリアンか?」
ダリアンはひとまず安堵した。宮殿に入るなり別々に連れて行かれたので彼の事がとても気がかりだった。
「大丈夫なの?」
「死ぬほど殴られたが、まぁまだ生きてる。そっちは無事か?」
「ええ、何ともない」
顔は見えないがユージンの声は元気そうだった。殴られたと言ったが怪我は酷いだろうか?
「明日には処刑って本当なの?」
「さぁな、いつ裁きが下ったのやら」
「ギルディールが、殺してもいいと命を下したからよ。何故そんな命令を?母違いとはいえ、兄弟じゃない」
ダリアンはギルディールの命令に納得がいかない。彼は母親と違い無闇に人の命を奪ったりする人間ではないと思っていた。
「王女様……サウル様はお亡くなりになっておられます。今さら生きて戻られては困るのでしょう。まさか本人だなんて、思ってはいらっしゃらないのでは?」
「それはそうでしょう。宮殿を追い出された後に行方が途絶え死んだと思っている」
「国王が毒を盛ってすでに虫の息だったなんて、幼かったギルディール王子が知る由もないでしょう」
「ギルディールに直接会って、本人だと分かれば放免されるんじゃないかしら?牢番を呼びましょう」
「ダリアン、少し話を聞いてくれ」
ダリアンが牢番を呼ぼうとした時、それまで黙っていたユージンが口を開いた。
「ええ、何かしら?」
「実は、森で偶然会ったスラオシャに、ツキという女の子を預けたんだ」
「スラオシャに?どうして?」
「その時俺は矢に塗られた毒で動けなかった」
「毒?!やだほんとに?!何故まだ生きてるの?」
「昔毒を食らったからか、同じ系統の毒ならよっぽどの量じゃない限り死ぬまではいかないみたいだ」
「凄い体質を得たわね」
「ダリアン様……」
黙って話を聞きましょうとミーナが頷く。
「スラオシャはその子を連れていったのね。
珍しいこともあるものだわ。彼が私以外の人を助けるなんて」
「その通り、だから少し交渉した。その子に会ったら助けてやって欲しい。身寄りのない迷子の可哀想な子なんだ」
「その子とあなたはどこで知り合ったの?」
「それが、目覚めたらいたんだ」
「め、ざ、め、た、ら、いた、ですって……?」
ダリアンは思わずミーナの腕をぎゅっと掴んだ。
作業用BGM StrayKids―Easy
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!
佐倉穂波
ファンタジー
ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。
学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。
三話完結。
ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。
2023.10.15 プリシラ視点投稿。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる