文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

告白は牢の中で

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「ここで大人しくしていろ、明日には処刑だ」
「だったら今晩くらい、もっとましな所で過ごしたい」
「ふざけた事を言うな盗人が」
「そもそも林檎を盗んだだけで死罪か、滅茶苦茶だな」
「黙れ」

ガシャンっ、と牢の扉が閉まる音が聞こえた。

「酷い臭いだ」

隣の牢の主がぼやくのを聞きダリアンとミーナは顔を見合せた。

「そこにいるのはユージン?」

ダリアンが声をかけた。

「ダリアンか?」

ダリアンはひとまず安堵した。宮殿に入るなり別々に連れて行かれたので彼の事がとても気がかりだった。

「大丈夫なの?」
「死ぬほど殴られたが、まぁまだ生きてる。そっちは無事か?」
「ええ、何ともない」

顔は見えないがユージンの声は元気そうだった。殴られたと言ったが怪我は酷いだろうか?

「明日には処刑って本当なの?」
「さぁな、いつ裁きが下ったのやら」
「ギルディールが、殺してもいいと命を下したからよ。何故そんな命令を?母違いとはいえ、兄弟じゃない」

ダリアンはギルディールの命令に納得がいかない。彼は母親と違い無闇に人の命を奪ったりする人間ではないと思っていた。

「王女様……サウル様はお亡くなりになっておられます。今さら生きて戻られては困るのでしょう。まさか本人だなんて、思ってはいらっしゃらないのでは?」
「それはそうでしょう。宮殿を追い出された後に行方が途絶え死んだと思っている」 
「国王が毒を盛ってすでに虫の息だったなんて、幼かったギルディール王子が知る由もないでしょう」
「ギルディールに直接会って、本人だと分かれば放免されるんじゃないかしら?牢番を呼びましょう」
 「ダリアン、少し話を聞いてくれ」

ダリアンが牢番を呼ぼうとした時、それまで黙っていたユージンが口を開いた。

「ええ、何かしら?」
「実は、森で偶然会ったスラオシャに、ツキという女の子を預けたんだ」
「スラオシャに?どうして?」
「その時俺は矢に塗られた毒で動けなかった」
「毒?!やだほんとに?!何故まだ生きてるの?」
「昔毒を食らったからか、同じ系統の毒ならよっぽどの量じゃない限り死ぬまではいかないみたいだ」
「凄い体質を得たわね」
「ダリアン様……」

黙って話を聞きましょうとミーナが頷く。

「スラオシャはその子を連れていったのね。
珍しいこともあるものだわ。彼が私以外の人を助けるなんて」
「その通り、だから少し交渉した。その子に会ったら助けてやって欲しい。身寄りのない迷子の可哀想な子なんだ」
「その子とあなたはどこで知り合ったの?」

「それが、目覚めたらいたんだ」

「め、ざ、め、た、ら、いた、ですって……?」

ダリアンは思わずミーナの腕をぎゅっと掴んだ。




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