文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

遥かなる故郷の空

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「行け!」

ユージンが馬の尻を叩いた。

馬はユージンが示した狭い道に向かったが、しかしすぐにその足が止まる。
2人の前方にも兵士が待ち構えていたからだ。

「聖杯の巫女だな!」

兵士の1人が叫んだ。

巫女は巫女だが恐らく巫女違いだ……と言いたかったがこんな状況でしかも兵士の格好までしているのだから通用するはずがない。

「悔しいわ、あと少しだったのに」
「今は下手に抵抗しないほうが良さそうです。機会を待ちましょう」

ダリアンは大人しく従うことにした。
すぐに縄をかけられ、同じく無抵抗で捕まったユージンと一緒にイルファンの宮殿へと連行された。


「お前が聖杯の巫女か?……ちょっと待てよ、なんで2人もいる?それも兵士の格好をした……」

裁きの広場で石畳に伏している2人のもとに、ギルディールがやってきた。
ダリアンの懐からラジャバードが這い出して、ギルディールの足下に駆けていった。

「ラジャバード?……ああ」

ギルディールが頭を抱えた。

「もう、戻ってきたのか……」
「……またお会いできて光栄です」

ダリアンは顔を上げ言葉とは裏腹な表情で答えた。

「もう、戻ってきた……とは一体どういう意味でしょう?」
「お前達はもう良い。話は私が聞く」

ギルディールは兵士達を追い払い2人の縄を外した。

「もしかして、わざと逃げられるようにあの部屋へ?」
「なんのことだ」
「秘密の通路、私達が見つけることを予測していたんですね」
「秘密の通路……そんなものがあの部屋にあったのか」
「それなら、ちゃんと馬までご用意頂きたかったわ」
「そもそも……いや、そうだな」

ギルディールは何か言いかけたが、かわりにため息を漏らした。

「一緒に捕まったあの人はどうなりますか?」

ダリアンはユージンの事が気になっていた。あの場でもし私達が一緒にいなければ、逃げられていたのではないか。

「他人の心配をしている場合か?」

ギルディールは低い声で唸るように答えた。
腰に手をやり思案しているのか、ダリアンを眺めている。

「仕方ない。兵士の服もお似合いだがお召し替え頂こう」



「結局、またここへ戻りましたね」
「……そうね。ミーナ、ちゃんとそばにいてね」
「はい、もちろんでございます」


2人はまた仄暗い牢の中にいた。



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