文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

瞬く碧星

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「サウル王子、そうでしょう?」

ダリアンはユージンの濡れた前髪をそっと分け傷のある左目を露にした。

「……友達っていうのは」
「懐かしい名前だな」

ユージンは暖炉の火に向き直った。

「サウル王子って、ギルディール王子が話していた……」

ミーナは両手で口を覆った。

「事故にあって宮殿を追い出されたと聞きました」
「王子は、宮殿を出る前には死んだ。国王と、いや先代の国王と、同じ毒を飲まされて」
「なんて惨い……アリアナ国王って本当に悪魔のような人ですね」

ミーナは首を左右に降り眉根を寄せた。

「もうひとつ謝ることがあります」
「ひとつどころじゃないと思うが……どの件についてかな?」
「バザールで、その……顔の……目のことを……」
「ダリアン」

ユージンはダリアンの言葉を遮った。

「いきなり呼び捨て?」

話を遮られたのと、呼び捨てにされたことで、ダリアンは些か憤る。

「俺もスラオシャに会って聞きたいことがある。何事もなけはればもうバルフに到着していると思うが」
「それなら、もう会わないと思うわね。残念だけど」

ダリアンは明後日の方を向き答える。

「そうか、そうだな……」
「でも、お金も返さなきゃいけないし、一緒にバルフまで行くっていう手もあるかもしれないわね」

今度は髪の毛先を束にして、クルクルと指に巻きながら言った。

「……いや、金はいい。商品を仕入れるために必要だったが」
「仕入れ?」
「俺は商売人だ。船であちこちに商品を運んでいる」
「そう」

ダリアンは唇を尖らせつまらなそうに下を向いた。

「ところで、あんたはなぜ逃げ帰るんだ?婚姻は破談か?」
「破談も何も、初めからアリアナ国王は姻戚関係なんて望んでなかったから」
「どういうことだ?」
「国王はリュトンを口実にバルフに攻め入り奪おうとしてる。次の満月までにリュトンを持って来なければ攻めると。だからスラオシャはリュトンを取りに行ったの。私達のために」
「リュトンか……」
「そういえばあなた、聖杯を持った巫女を知っている?」
「巫女?」
「一緒に林檎と薔薇を盗んだんでしょう?その時に巫女を名乗った女がいたとか」
「あれこれ説明するのは面倒だが、それは誤解だ。あの子は巫女じゃない」
「でも、リュトンを持っていたんでしょう?」
「……ツキは巫女でもないし持っていたのは、ただのランプだ」
「ランプ?」
「そうだ」
「そうよね、リュトンがこの世に2つあるなんてありえないもの」

ダリアンは何度か頷いた。

「ところで……とても厚かましいお願いだとは思うんだけれど……」
「身分の高い人間からのお願いは、お願いとは言わないだろ」





作業用BGM   Solji―Rains Again
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