文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

罪と絆

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「王女様危ない!」

ミーナがダリアンの腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。
大きな荷物を積んだロバが、ダリアンの鼻先数センチの所を何頭も通り過ぎて行った。

「ぶつかるところだった」
「あいつら、あんなに大きな目がついているっていうのに、前なんてまったく見ちゃいませんからね、本当にバカな奴等ですよ」

ロバを見送りながら真剣に悪口を言っているミーナがおかしくて、ダリアンはつい笑ってしまった。

「何がおかしいんですか?」
「ううん、何でもない。ただ、あなたが居てくれて本当に心強いと思って。私は何も出来ないから……」
「何をおっしゃいますか、王女様はバルフの大切な巫女様にあられます。民にはその存在自体が必要なのですよ。私は王女様を必ずバルフにお連れします。御心配は無用です!」
「……ありがとう。必ずふたりで戻りましょう」
「はい」

ふたりは手を取り合って決意を強めた。

「街から出るにはどちらへ行ったらいいかしら?」
「とにかく宮殿から離れましょう、馬でも借りられればいいんですけど」

2人は宮殿とは逆の方向へと歩み始めた。

「ミーナ、あそこに馬がたくさんいる」

塀越しに馬の頭が見え隠れしていた。

「馬ですね、表へ回ってみましょう」

2人は珪藻土で塗り固められた白い壁沿を歩いていった。

表の門は広く立派で、両端には看板がわりの旗が立っている。

「ここは宿屋ですね、旅人達の馬を休ませているんです。上手くすれば馬が手に入るかもしれません」
「そうね、入ってみましょう」

2人は開け放たれている門から中へ入っていった。
ダリアンが木の扉を叩こうとするのをミーナが慌てて止めた。

「ダメです!」
「えっ?」
「私達は今、兵士です。しかも女なんですよ」
「あら、そうだったわ」
「絶対に怪しまれます。さぁ、裏の馬舎へ」
「盗むの?!」

馬に馬具を付けているミーナにダリアンが小声で聞いた。

「仕方がないですよ、さぁ早く乗ってください」
「でも、心が引けるわ。泥棒なんて……」
「そんなこと言ってる場合ではありません」
「わかった、そうよね」

ダリアンは胸当ての中から小袋を取り出し中を覗いた。

「相場はどれくらいかしら?」

ダリアンは一寸悩み、指輪だけを抜き取るとそれを馬の柵に結びつけた。




作業用BGM  GWSN―Red-Sun
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