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第2幕 聖なる巫女の千一夜
兵士と猫
しおりを挟む「どこへ行く?」
返事はしたもののダリアンは二の句が継げない。
「持ち場は何処だ?」
兵士が馬を引き返し戻ってきた。
「(どうしましょう?)」
「(何て言えば?)」
2人は顔を見合わせる。
「ミャァーーー」
ちょうどその時、猫の鳴き声がすぐそばで聞こえた。
鳴き声の方を見ると、ラジャバードが大門の円柱の柱の傍にちょこんと座っている。
「(ラジャバード?!)」
「(ラジャバード!!)」
「王子様の大事な猫を探しておりました!」
ダリアンはラジャバードを指で示した。
「あの白い仔猫は確かに王子の……早く行ってとらえよ」
「はい!」
2人はラジャバードの元へ走った。
ラジャバードは物凄い勢いで自分に向かって走ってくる人に驚いたのか、ぱっと門の外へ逃げて行った。
「待てぇ!」
2人もラジャバードを追いかけて、門をくぐりり抜けた。
ラジャバードが小さな横路へと飛び込んで行ったので、ダリアン達も慌ててその後を追った。
「ラジャバード、待ちなさい!」
ラジャバードは民家の壁と壁との狭い道を足早にトコトコと歩いていく。
「ラジャバード、待って!」
あたりが明るくなった頃、ダリアンはようやくラジャバードを捕まえ抱き上げた。
「あー、王女様!……はぁ、ラ……バード」
だいぶ遅れて息を切らせたミーナが追い付いてきた。壁に手を付き横っ腹を押さえている。
「ミーナ、大丈夫?」
「はい……、王女様も……はぁ……ご無事で……」
「ラジャバードのお陰で助かったわ」
「いつのまにか……、後を付いて来て……いたんですね」
「さぁ、次は移動手段を探さないと、馬でもいたらいいんだけど」
「そんな簡単に馬なんていませんよ」
「そうよね」
2人は路地から再び大きな通りへ出た。
「道もよく分からないですね」
ミーナが通りの左右を交互に見ている。
通りには人の姿がチラホラと見え始めていた。
ナンの屋台や、スープの店など、朝食を売る者達が多く、食欲を刺激する美味しそうな匂いが漂っていた。
これから出勤するのか、それとも帰宅するのか店先には兵士の姿も多い。
おかげで2人も目立たずに歩くことが出来た。
荷台に山のように新しい薪を積んだ牛車も行き交っている。
「王女様、危ない!」
作業用BGM ITZY―WANNABE
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