文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

深紅の衣は脱ぎ捨てて

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ダリアンは扉をそっと開けた。

「ここは……」
「王女様、何でしょうかこのお部屋は?」

扉から出るとそこは無人の小さな小屋だった。
蝋燭の明かりで照らすと、壁沿いには棚があり、棚には兵士の衣類と弓矢、盾に剣などの武器が整理され並んでいた。

「武器庫?それにしては小規模すぎるわね」
「がっかりです。あんなに歩いたのにまだ宮殿の敷地からは出られてないなんて。なんて広いんでしょう……」
「ミーナ、これに着替えましょう」
「えっ?これにですか?」
「そう、この服は本当に嫌い」

ダリアンは国王から贈られた深紅の衣を脱ぎ捨てて、兵士用の服に着替えた。

無染色の綿シャツにズボン、その上から藍染めの長いベスト、腰に太いベルトを巻き、革製の胸当てを紐で結んだ。
最後に付けていた飾りの類いを全部外し、腰には剣と短刀を携えた。

「さぁ、これでよし」

最後に黒い外套を羽織り、頭巾を目深に被った。兵士2人はお互いの身なりを確認しあい頷いた。

「そうだ、王女様これを」

ミーナが絹の小袋を差し出した。

「それは……あの男の」
「連れ出されるときにこれだけは持って出ることが出来ました」

ダリアンは小袋を受け取り、胸当ての中にしまった。

「さぁ、外へ出るわよ……」

小屋の扉を少し開き2人は外の様子を伺った、
空は白々と明け初め、うっすらと霧がかかっている。
近くには何棟か建物が並びそれぞれ回廊で繋がっていた。人の気配はあまりなく、その周りを数人の兵士が見回りをしている程度だった。

「見て、あそこに神殿の塔が見える。昨日塔の上からあれを見たわ」
「神殿の正面に大きな門がありましたね」
「ええ、そうよ。行きましょう」

2人は神殿を目指した。
なるべく堂々と大股でさっさと歩いた。

神殿の脇を抜け正面の広い道に出ると、正門から馬に乗った兵士が2人やってくるのが見えた。

「どうしましょう」
「軽く挨拶をして行きましょう」

ダリアンとミーナは、道の端に並んで立ち、頭を下げながら馬が通り過ぎるのを待った。
馬が無事に2人の前を通り過ぎ、ほっとして頭を上げたとき何故か馬が止まった。

「おい」

馬上から声が掛かった。
2人はまた頭を下げ顔を隠した。

「門兵か?交代にしてはまだ早いな」
「……(どうしましょう?)」
「(何か言わなきゃ!)……はい!」

ダリアンは出せる範囲で1番低い声を出した。



作業用BGM  NATURE―Girls
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