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第3章 聖なる巫女の最後の願い
恋の戦死者
しおりを挟むそうだよ……
どうして、いつも私ばっかりがこんなめに?
なんでみんな、ハナばっかり見るの?
ハルキ先輩も、
……ユージンも。
私、こんなに頑張ってるじゃん。
どうして私を見てくれないの?
誰も私を認めてくれない……。
リアルの世界でも、この異世界でも、私なんかいてもいなくても同じ、名前のない、ただのエキストラだ。
虚しくて、……悔しい。
「お前の望みはなんだ?」
私の望み……?
私を見てほしい、私だけを見てほしい。
疲れたとき、もう歩けなくなったとき、側に来ていたわって欲しい。
「頑張ったね」って、疲れた足をさすってもらいたい。
辛いとき、悲しいときには、一緒にいて助けてほしい、慰めてほしい。
「大丈夫」そう言って抱き締めて欲しい。
ただ、無条件に愛されたい……
ハナは何もしてないのに、ただ綺麗で可愛いってだけで、皆に大事にされる。
どうして?
不公平過ぎじゃない?
ハナさえいなければ……
「出でよ……我が魔神」
私はランプの持ち手を掴み胸元に引き寄せた。
「イフリート!姿を現し我の願いを叶えよ」
不思議だった。
今まで、ぜんっ全思い出せなかった魔神の名前が、迷うことなく、考えることもなく、自然と口から出てきた。
ランプの蓋がカタカタと鳴り始め、ヒンヤリとした冷たい風が、蓋の隙間から漏れてくる。
「お前の望みを叶えよう」
ボンっ!
蓋が飛んで、凄まじい冷気が空高く立ち上っていく。冷気は渦を巻き、あっという間に大きな竜巻に変わった。
竜巻は刑場の中を無秩序に動き移動する。
並んでいる松明の炎が次々に竜巻へと吸い上げられていく。
竜巻は赤い炎の塊となって、刑場の上に浮かんだ。
ラクシュが突然飛び起き立ち上がった。
私の足は解放されたけど、痺れて何の感覚もない。上体だけを起こして足をさする。
空気を巻き込む大きな音と、熱い風が空から強く吹いてくる。
そこにいる全ての人が、動きを止めそれを見上げていた。
空に留まる、大きな炎の赤い塊。
塊が形を成していく。
尖った口がある頭、長く鋭い爪を持つ手足。
背中が膨らみ、そこから翼らしきものが生えてきた。
その両翼は手足を伸ばすかのように、ゆっくりと何もない空に広がり、最後に翼の先までパーンと張る。
刑場は炎に照らされ、熱気に包まれた。
ハラハラと火の粉が舞い落ち、旗に落ちた赤い粒は炎を上げ布をなめていく。
旗を持った兵士は、悲鳴を上げ燃える旗を投げ捨て逃げていった。
燃えるドラゴン……ゲームのボスキャラみたいな……あれが、ランプの魔神イフリート……?
作業用BGM CRAVITY―Flame
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