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第2幕 聖なる巫女の千一夜
蛇の口
しおりを挟む「王女様、先程から何をされているんですか?」
ダリアンは部屋の壁を叩き、花瓶を持ち上げ、枕をどかし、水瓶を覗き、今は果物をひとつずつ床に並べていた。
「何って、決まっているでしょう。隠し扉よ」
「隠し扉?」
「王子がここは秘密の部屋だって言ってたじゃない」
「はい、確かにおっしゃられてました」
「だったら絶対に隠し扉があって、外へ抜ける通路があるはずよ」
「ああ、成る程……だとして、なぜ果物を1列にお並べに?」
「1列?あら、ほんとね。ただこの果物皿の下を見たかっただけよ。扉の鍵か何かがあるかもしれないでしょう?」
「王女様、それならこちらでございましょう」
ミーナが部屋の角に立った。
「申し訳ございませんがそちらの端をお持ち下さい」
ミーナはしゃがんで絨毯の端を持ち上げた。
そして2人で絨毯を丸めていった。
ちょうど半分ほど丸めた所で石床が四角く切り取られ、代わりに板が張ってある場所があらわれた。
「凄い、ほんとに隠し扉だわ!」
「隠し扉といえば絨毯の下ですよ。さぁ、これをどかしましょう」
ミーナが板を外すと、そこには下へと続く階段があった。階段の先は暗く何があるのかよく見えない。
「今、燭台を」
ミーナは蝋燭が灯る燭台を持ってくると、階段の先を蝋燭の明かりで照らしてみた。
階段は地下深くまで続いているようだ。
「……行きましょう」
「ダリアン様、本当に行かれるんですか?」
「ええ、絶対に宮殿の外へ続いているはずよ」
「大丈夫でしょうか、暗いですし……何が出るかわかりませんよ?あっ、ダリアン様、お待ち下さい」
ダリアンはミーナから燭台を奪うと、さっさと階段を下りていった。
「ミャァー」
振り返ると、ラジャバードが階段の上で困ったような顔で鳴いていた。
「ごめんね、お前は連れていけないの」
ダリアンはラジャバードに別れを告げ、さらに階段を下りて行った。
階段を降りきると、その先は真っ暗な狭いトンネルになっていた。
「行きましょう」
ダリアンはどんどん進んでいく。夜明けまでもうそんなに時間がないはずだ。
外が暗い内に出来るだけ遠くへ行きたかった。
ミーナは先の見えない真っ暗な道を進むのが不安で、ダリアンの後にくっついて進んでいく。
「あっ、階段よ!」
「出口ですかね……」
2人は階段を上りやがて小さな扉の前に立った。
ダリアンはゆっくりとその扉を押し開いた。
作業用BGM Moon Byul―Eclipse
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