文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第3章 聖なる巫女の最後の願い

ゾンビ巫女、現る

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何が違うのか……人だって人を容赦なく傷つけるのに。

あいつのひと吹きで、何もかもが一瞬で終わるんだ。

私も一緒に消えて無くなればいい。

それでいいじゃん、もうチマチマ悩むのも、傷つくのも、苛々するのも、重たい心を引きずりながら生きていくのも、一瞬で終わるなら……それで。

「ツキ、俺を見ろ!」

スラオシャが私の肩を揺さぶる。

「いいじゃん、もう。いろいろ疲れた……」
「おい、しっかりしろ!」

ちらりとスラオシャを見る。
怖い顔、見たくない。
説教なんか、聞きたくない。

「どうせ、王女様を助けたいだけでしょ。自分の仕事を遂行したいから。……みんな、自分の欲だけを追いかけてるくせに、なんで私は……私だけ、自分の欲を我慢しなくちゃならないの?」
「覚悟はあんのか?」
「覚悟?」
「誰かの命と引き換えに自分の望みを叶える覚悟だよ!」
スラオシャは舌打ちをし、立ち上がった。
そして、私の喉元に刃を向けた。

「あいつをランプに戻せ」

平淡で低く圧のある声だった。
わかってる。
スラオシャは力ずくであれを阻止する。

つまりそれは、この刃で私の喉を裂いてでもってことだ。

きっと数秒も待たない。

せめて、痛くないようにして欲しい。
痛いのは大嫌い。

どうせこの世界にも、元の世界にも私の居場所なんてないんだから。

あんなに死ぬのが怖かったのに、今はもう何も感じない。

目を閉じる。

途端に闇がまとわりついてくる。
1人ぼっちの世界。


もう……息をすることすら苦痛だ。



「駄目!飲み込まれちゃ駄目!!」

聞き覚えのある声だった。

「それはあなたの本心じゃない!!」

ハナの声が聞こえる。

ああ、違う。
王女様だ。
顔が似てれば、声も同じになるんだね。

「私の言うことを聞いて!!私の後に続いて言って!!!」

「わが魔神イフリートは!」
「……」
「言いなさい!言わないと死んでも後悔するんだから!!」

死んでも後悔する?
死んだら何もかも終わりでしょ、何も感じないのに、後悔なんてしない。

「言いなさい!この偽巫女!!」

……偽巫女??

「バカ女!!」

はっ?!……バカ女??

ちょっ、待って。

私は目を開けて王女様を見た。

「自覚はあるのね、バカっていう」

さっきまで、か弱げにイフリートをぼんやり眺めていただけの人とは、まったくの別人みたいだ。

ユージンを押し退け前に出てくると、火の粉を浴びながら、仁王立ちで私を指差している。

「いい?この際だから言ってあげる。偽物巫女のバカ女。無能な偽巫女だから、こんな邪神に乗っ取られんのよ!!」



作業用BGM  solar―Spit It Out
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