103 / 117
第3章 聖なる巫女の最後の願い
ゾンビ巫女、現る
しおりを挟む何が違うのか……人だって人を容赦なく傷つけるのに。
あいつのひと吹きで、何もかもが一瞬で終わるんだ。
私も一緒に消えて無くなればいい。
それでいいじゃん、もうチマチマ悩むのも、傷つくのも、苛々するのも、重たい心を引きずりながら生きていくのも、一瞬で終わるなら……それで。
「ツキ、俺を見ろ!」
スラオシャが私の肩を揺さぶる。
「いいじゃん、もう。いろいろ疲れた……」
「おい、しっかりしろ!」
ちらりとスラオシャを見る。
怖い顔、見たくない。
説教なんか、聞きたくない。
「どうせ、王女様を助けたいだけでしょ。自分の仕事を遂行したいから。……みんな、自分の欲だけを追いかけてるくせに、なんで私は……私だけ、自分の欲を我慢しなくちゃならないの?」
「覚悟はあんのか?」
「覚悟?」
「誰かの命と引き換えに自分の望みを叶える覚悟だよ!」
スラオシャは舌打ちをし、立ち上がった。
そして、私の喉元に刃を向けた。
「あいつをランプに戻せ」
平淡で低く圧のある声だった。
わかってる。
スラオシャは力ずくであれを阻止する。
つまりそれは、この刃で私の喉を裂いてでもってことだ。
きっと数秒も待たない。
せめて、痛くないようにして欲しい。
痛いのは大嫌い。
どうせこの世界にも、元の世界にも私の居場所なんてないんだから。
あんなに死ぬのが怖かったのに、今はもう何も感じない。
目を閉じる。
途端に闇がまとわりついてくる。
1人ぼっちの世界。
もう……息をすることすら苦痛だ。
「駄目!飲み込まれちゃ駄目!!」
聞き覚えのある声だった。
「それはあなたの本心じゃない!!」
ハナの声が聞こえる。
ああ、違う。
王女様だ。
顔が似てれば、声も同じになるんだね。
「私の言うことを聞いて!!私の後に続いて言って!!!」
「わが魔神イフリートは!」
「……」
「言いなさい!言わないと死んでも後悔するんだから!!」
死んでも後悔する?
死んだら何もかも終わりでしょ、何も感じないのに、後悔なんてしない。
「言いなさい!この偽巫女!!」
……偽巫女??
「バカ女!!」
はっ?!……バカ女??
ちょっ、待って。
私は目を開けて王女様を見た。
「自覚はあるのね、バカっていう」
さっきまで、か弱げにイフリートをぼんやり眺めていただけの人とは、まったくの別人みたいだ。
ユージンを押し退け前に出てくると、火の粉を浴びながら、仁王立ちで私を指差している。
「いい?この際だから言ってあげる。偽物巫女のバカ女。無能な偽巫女だから、こんな邪神に乗っ取られんのよ!!」
作業用BGM solar―Spit It Out
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!
ミズメ
恋愛
侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。
その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。
「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることになってしまう。
王座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。
「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」
ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……?
●他サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
人の身にして精霊王
山外大河
ファンタジー
正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。
主人公最強系です。
厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。
小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる