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第2幕 聖なる巫女の千一夜
薔薇の名はアリアナ
しおりを挟む「離せ!」
「さて、どう決着をつけようか」
アリアナは首を傾け美しい微笑みをギルディールに向けた。
ギルディールはその冷たく恐ろしい微笑みに射られ竦んでしまう。
「ギルディールこちらへ」
まるで見えない糸に引かれるかのように、ギルディールはアリアナの側へ近づいた。
「お前が罰を与えるのです」
ギルディールは大きな瞳を更に広げ母親を仰いだ。
(彼は何もしていないのに何故ですか?)
「さて、良いものがありますね」
アリアナはギルディールの手にあった小さなナイフを見つけると、口の端に笑みを浮かべた。
「母上?」
アリアナはギルディールの手を引き、兵士に自由を奪われている少年の前へ彼を押し出した。
「さぁ、彼の目を刺しなさい」
アリアナは腰を屈めギルディールにだけ聞こえるように彼の耳元で囁いた。
「母上……(そんなことは出来ません)」
ギルディールは母親を振り仰ぎ、視線で懇願した。
「さぁ」
少年の碧い目がナイフを捉え、そして再びアリアナに戻る。
(こんなことは絶対に嫌です!)
ギルディールの手にアリアナの手が重なった。
「こうやってしっかり持たないと、手を傷つけますよ」
アリアナはナイフを持つギルディールの手に、もう一方の手を重ね、しっかりとそれを握らせた。
ギルディールは最後にもう一度だけ、すがるように母親を見た。
「さあ、やりなさい」
もう、逃げられない。母の言うことは絶対にしなければいけなかった。
言うとおりにしなければ、もっと酷いことが起きる。
ギルディールはそれを良く知っていた。
「わあー!」
スッとギルディールのナイフの刃先が、少年の顔をかすった。
少年の髪がはらりと落ち、頬に赤い筋が入った。
ギルディールの目から大粒の涙がこぼれ落ちるのと、少年の頬を血が伝い落ちるのとは、ほぼ同時の事だった。
「意気地のないこと」
アリアナは側にあった、今しがた消されたばかりの松明の中からひとつを抜き出し、それを持って少年の元へ戻った。
「押さえておけ」
兵士が少年の頭を強く押さえつけた。
アリアナは何の躊躇もなく、一寸の迷いもなく、まだ燻り煙の上がる松明の先を少年の左目へと押し付けた。
――――凄まじい叫び声だった。
ギルディールは苦しむ少年を直視出来ず目と耳を塞ぎながら、長く続く悲鳴がおさまるのを震えながら待つしかなかった。
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