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第2幕 聖なる巫女の千一夜
告白は突然に
しおりを挟む「あの悲鳴……」
「大丈夫、夢ですから」
「あの声が頭から離れない……」
ギルディールはダリアンから離れ膝を抱えた。
ミーナが水の入った椀をそっとダリアンへ渡した。
ダリアンはそれをギルディールへ差し出す。
彼は椀の水をひと息に飲み干すと、また膝を抱えた。
ダリアンは彼へ寄り添い、その背中をゆっくりとさすってやった。
ラジャバードがいつのまにか籠から出て来て、寝台へとよじ登ろうとしている。
ダリアンはラジャバードを抱き上げ寝台にのせてやった。ラジャバードは覚束無い足取りでギルディールの脚まで歩いてゆくとその足首辺りにぴたりとくっついた。
やがて浅かったギルディールの息遣いが深いため息へと変わっていった。
「夢じゃない……」
ギルディールは苦痛を飲み込むかのように押し黙った。
「では、夢の話と思い聞きましょう」
「とても、話せるようなことじゃない」
「ここは秘密の部屋でしょう?」
ギルディールは顔を上げ、ダリアンを見つめた。その瞳は不安に支配され翳っている。
「昔の話だ……」
「どんなことでも」
ギルディールはラジャバードを抱き上げ胸に抱いた。その頭を指先で撫でているとラジャバードは満足そうにその目蓋を閉じ眠ってしまった。
ギルディールがやがて重い口を開いた。
イルファン国王には2人の妃がいた。
最初の妃との間に第1王子サウルが生まれた。
その5年後、国王は傾国の美女と誉の高かったアリアナを側室に迎え入れる。
国王はアリアナに夢中になり、最初の妻と息子は次第に遠ざけられた。
最初の妻が病で亡くなるのとほぼ同時に、第2王子となるギルディールが生まれ、第1王子のサウルはますます忘れられた存在となった。
そして彼が間もなく数えで10歳になる、という年に国王が突然倒れそのまま何も言わずに旅立ったので、アリアナがイルファン国の国王となり全ての権力を掌握した。
サウルが間もなく13歳となり成人として戴冠出来るという頃、事故は起こった。
流れでいえば当然サウルが玉座に座らなければならず、またそれを望む声も少なくはなかった。いくら忘れられた王子とはいえ、国民は彼の事をうっすらだが覚えていた。
しかし、サウルがその頭上に冠をのせる時は来なかった。
アリアナがその冠とそれに伴う権力に執着し離そうとはしなかったからだ。
作業用BGM sunmi―pporappippam
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