文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

王子様のサプライズギフト

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「まぁ!」

ダリアンの表情が自然にゆるみ笑みが溢れた。
籠の中から大きな青い瞳がダリアンを物珍しそうに見上げていた。

「なんて可愛い子なの?」
「こいつの面倒を見てやって欲しい」

籠の中で真っ白い仔猫がちょこんと座っている。ダリアンは仔猫の鼻筋を優しく撫でた。

「お互いに気に入ったようで良かった」

ギルディールは仔猫を抱き上げ、ダリアンの腕へ渡した。

「名前は?」 
「まだない。好きな名前で呼ぶといい」
「そうね……ラジャバード、それがいいわ」
「青い宝石か、ぴったりだ」
「まさに、この丸い目は青い宝石ですね」

仔猫はダリアンの腕の中でウトウトし始めた。

「ラジャバードはもう眠いみたいだ。ここでは風邪をひくな」

ギルディールは、ダリアンの腕から仔猫を引き取ると籠の中に戻した。
そして立ち上がると高座敷から下りて行く。
ダリアンは残念そうに仔猫を見送った。

「どうした?お母さんも一緒に来ないと」

ギルディールが、手招きしてダリアンを呼んだ。

「ラジャバードは口実ですね」

ミーナはダリアンに意味深な笑みを寄越しその袖を引っ張った。


ギルディールは2人を特別な部屋へと案内した。

「ここは、母上も知らない場所だ」
「国王に知られてはいけないことをするときにお使いですね」
「ハハハ。まぁ、そんなとこ。秘密は必ず守られる。まさにこんな時のための部屋か」

ギルディールは仔猫の籠をダリアンに渡すと、天蓋付の大きな寝台の上に横になった。

「さぁ、ここに座って話してくれないか。今度はどんな話がいいかな」

ダリアンはギルディールが示した寝台の上ではなく床に腰を下ろした。
ミーナは部屋の隅に座り2人を見守ることにした。

「昔、ある国に……」

ダリアンはまた話を始めた。
王子はダリアンの話に耳を傾け、時に声を上げて笑い、時々深いため息をついた。
ミーナが部屋の灯りを半分ほど消すと、暫く話を聞いていた王子はいつしか眠ってしまい。
ダリアンもそのまま寝てしまった。

「ワァーー!」

突然の叫び声に、ダリアンは目を覚ました。
声のした方を見るとギルディールが身体を起こし肩を上下させながら空を仰いでいた。

「どうか、されましたか?」

ギルディールは青白い顔をダリアンへ向けた。

「……夢をみた、恐ろしい夢だ」

ダリアンは王子の寝台へ近付き、その顔を覗きこんだ。

「大丈夫です。夢ですから」

ギルディールはダリアンの腕を掴み、そのまま抱き寄せた。
ダリアンは驚いたが、ギルディールの背に腕を回しその背を優しくさすった。

「大丈夫、何も心配することはありません」
「今でも、はっきりと覚えている」
「夢ですよ」
「……あの……悲鳴」





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