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第2幕 聖なる巫女の千一夜
緋色に染まる街
しおりを挟む「食欲がないか……」
ダリアンは暗い顔で火の灯った緋色の街並を見下ろしていた。
「それも無理はない。が、まだ夜は始まってもいない。これからの時間はもっと長いぞ。よく食べて、また話を聞かせてくれ。俺は国王と食事をしなくちゃならないから、暫く中座する」
ギルディールが去り、ダリアンは考えに耽った。どう考えても八方塞がりになる。いっそ、このままここから飛び降りようか。
「大丈夫ですよ、必ずスラオシャがリュトンを持って戻ります。その時は、バルフと王女様の力を見せつけてやって下さい。きっと、地面を掘る程にひれ伏すと思います」
ミーナには申し訳ないが、そうはならないことは分かっている。
「それまで、しっかり食べて、よくお眠り下さい。せっかくあの暗くて汚い牢から出られたんです……ああ、思い出すだけでも身震いが止まりません」
「ありがとう。そうよね」
ミーナはダリアンの前にせっせっと皿を並べている。ダリアンは葡萄の実をひとつ摘まんだ。
「ところでダリアン様。あの王子ですが」
ミーナが神妙な顔で声を潜めた。
「王子が?」
「国王を恐れているのに、ダリアン様を牢から出すなんて矛盾してませんか?」
確かに、国王に知られれば王子といえども、ただじゃ済まなそうな事をしている。
「行動に矛盾が生じる場合、考えられるのはただひとつです、そうですよ間違いありません!」
ミーナが自信満々に頷いた。自身の考えに少しも疑問の余地などないようだ。
「あの王子はダリアン様を好きでいらっしゃいます!」
ゴホッ、口に入れた葡萄がおかしな所へ入って、ダリアンはむせてしまった。
「国王を恐れているのに、ダリアン様を牢から出すなんて矛盾してます!そうですよ、それしか考えられませんて……あら?ダリアン様どうなされましたか?大丈夫ですか?葡萄?葡萄が喉に?大変どうしましょう!」
食事を終え、夜も深まった頃にギルディールが小さな籠を抱え戻ってきた。
高座に上がると微笑みながらダリアンの前に座った。
「さぁ、ご対面だ」
ギルディールが籠に話しかけた。
「実は頼みたいことがある」
「……私に?」
人質の自分が頼む事があっても、ギルディールが自分に何かを頼むなんて、立場的にありえない。ダリアンは怪訝そうに籠を見る。
まさか、この中に誰かの首でも入っているのではないかと身構えた。
ギルディールはダリアンの前に籠を置くと、そっと蓋を開けた。
「まぁ!」
作業用BGM N.Flying―Oh Really?
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