文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2幕 聖なる巫女の千一夜

影のない男①

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とある街に、ジャンガという男がおりました。
ジャンガは働くのが嫌いな男で、様々な仕事を転々としておりました。
ジャンガが王様の宮殿を造る仕事をしていたときです。
「ああ、仕事に行きたくないな。力仕事は疲れるし俺の性に合わない」
そう、ぼやきながら家を出ました。
「なぁ、そんなに行きたくないなら、俺が替わりに仕事をしてやろうか?」
どこからかそんな声が聞こえてきました。
「誰だ?」
辺りを見回しましたが誰もいません。
「ここだ、お前の足下だ」
男は自分の足下に目をやりました。
「俺はお前の影だ、今日お前の替わりに仕事に行ってやるよ」
「影?」
男はにわかには信じられませんでしたが、仕事をするのが本当に嫌だったので、影の言うとおりにしました。
ジャンガは影になり、影はジャンガになってよく働きました。
夜になると、ジャンガはもとの体に戻り、影はまた影になりました。
ジャンガは影の間、何もせずに、ただ自分の体の後について行けば良かったので、大変楽でした。
ひと月が経った頃には、よく働くジャンガは雇い主に気に入られ、稼ぎが少し良くなりました。
「やぁ、影のお陰で随分楽になったな」
ジャンガは毎晩美味しいものを食べ、酒をたくさん飲みました。
ふた月が経った頃には出世までして、雇い主の娘と結婚することになりました。


「おい、おい、そんなうまい話があるか?」

ギルディールが話の途中で口を挟んだ。

「もちろんでございます」

ダリアンはゆっくりと低い声で答えた。



またふた月が経ち、ジャンガの婚礼費も充分に用意出来たところで、いよいよ雇い主の娘との婚礼の日となりました。
「影よ、今までご苦労だったな、今日は替わらなくて良いぞ」
「わかりました、それでは今日、私は影でいましょう」


「まてまて、それはずるいじゃないか、今まで苦労してきたのは影のほうだ」

またもや、ギルディールが口を挟んだ。

「そうやって、もう影とは替わらないつもりだろう?それじゃぁ、怠け者が特をするただの良い話じゃないか」
「結末をご存じならば、もうこのお話はよろしいですか?」
「いや、待てよ。影だって黙っているわけがない……」
「王子、お話を続けますか?」
「ああ、もちろんだ」

ダリアンは話を続けた。




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