56 / 117
第2幕 聖なる巫女の千一夜
毒親のせいです
しおりを挟む「……このような場所へ、一体何事でございましょうか?」
「何事でもない、放っておけ」
牢番は深々と頭を垂れ、持ち場へと戻った。
「まさか、母上がここまでするとはな……」
「!」
ダリアンは驚いて、ギルディール王子を見上げた。
「どちら様でございますか?」
ミーナが小声で、ダリアンに尋ねた。
「そういえば正式に挨拶はしていなかったかダリアン王女、私が君の夫になるギルディール、いやはずだった……か」
ギルディールは鉄柵の前まで来ると、ダリアンと同じ目線になるようにしゃがんだ。
「……このような所まで何をしに?」
「もちろん、あなたをお救いに……と言いたいところですが、それはかなり難しい」
「―――あら、そう。だったらもうお帰りくださいな」
ミーナが小さな声で毒づいた。
「何故あんなことを?」
ダリアンは王子に背を向けたまま尋ねた。
「ん?何のことだ?」
「私の従者を蹴ったでしょう?腹立たしく許しがたい事です」
「ああ。そのことか」
「何故あんな乱暴を?」
「母上は気が短いんだ」
「どういうことかしら?」
「ああでもしなきゃ、あいつは殺されてただろうよ。返事なんか待ちゃしない、言ったソバから気が変わる。難しいんだ、本当に」
「だから、早く返事をさせるために蹴ったというの?」
「まぁ、テンポを狂わせないため?」
「まったく理解できない」
「理解はしなくてもいい、でも感謝はしてほしいなぁ。ああでもしなきゃ、あいつはあの場で死んでたぜ」
「まさか……」
「母上は……血を見るのが大好きなんだ、趣味と言ってもいい。特に若いヤツがなぶり殺されるところを見ながら酒を飲むのが悦らしい、あの顔も母上の好みだった」
ギルディールは肩をすくめた。
「あなたは?」
「俺はそんな悪趣味じゃない」
「でも、お母様には逆らえない」
「もちろん、国王には誰も逆らえないさ」
「恐ろしい人」
「人?あれは人じゃない」
ギルディールは苦笑した。
「人の皮を被った化け物だ」
ダリアンが振り返ると、ギルディールは立ち上がり牢番を呼んでいるところだった。
牢番が慌ててやってくる。
「おい、もう少しマシな部屋はないのか?それからこの臭いはなんだ?一生鼻についてまわりそうだな」
作業用BGM Pentagon―Basquiat
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
人の身にして精霊王
山外大河
ファンタジー
正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。
主人公最強系です。
厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。
小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。
オーバーゲート
JUN
ファンタジー
迷宮と呼ばれるものを通じて地球に魔力が流れ込み、生活が一変してから半世紀。人工魔素実験の暴走事故で大きな犠牲が出、その首謀者の子供である鳴海は、人に恨まれながら生きていた――とされているが、真実は違う。迷宮を囲い込んだ門の内側で、汚名をそそぎ、両親を取り戻すため、鳴海は今日も探索に打ち込む。
【完結】神の巫女 王の御子
黄永るり
ファンタジー
大神に仕えるため神殿で巫女として永遠に暮らしていくと思っていたアーシャに転機が訪れる。
神と王との間で交わされる拒めない契約により、突然神殿を去ることになってしまった。
王の側室として生きることとなったアーシャに、先代巫女の真実が知らされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる