文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

文字の大きさ
上 下
55 / 117
第2幕 聖なる巫女の千一夜

美味しいチーズがやって来た🐭

しおりを挟む


地下の牢獄は暗く、空気は淀み悪臭が染み付いていた。
窓はなく完全に外界とは遮断された空間だ。
雑に積まれた石の壁や床は突起や窪みの起伏が激しく、座しても横になっても、とても休めるものではない。

牢番の側にある松明の灯りだけが唯一の光だが、それもダリアンとミーナのいる牢までは、ほとんど届いていない。

「ダリアン様をこんな酷い場所に置くなんて、なんて国王でしょうか」
「ミーナ、ごめんなさい。こんなことになって」

お互いの顔もよく見えない中、2人は寄り添い手を繋ぎ合う。

「何故そんなことをおっしゃいますか、私のことなど、ご心配には及びません。……ああそれにしても酷い臭いですね」
「……ミーナ、さっきから、何かいる気がしない?」
「ええ。部屋の隅に……私には心当たりがございますが、ダリアン様はどうか無視をお続けください、決して確かめようとしてはいけません」
「大丈夫よ、こんな暗いんですもの、すぐ側まで来ない限り確かめようなんてないも……」

「ぎゃあああああ!」

言葉の途中でダリアンの裸足の指先に何かが触れた。恐怖と嫌悪の混じりあったダリアンの悲鳴が獄中に響き渡った。

ダリアンの悲鳴とともに2人は立ち上がり抱き合った。

「足の指を噛るつもりよ!」
「ダリアン様落ち着いて。大丈夫です、もう少し柵の方へ参りましょう」

2人は抱き合いながら恐る恐るゆっくりと通路に面した鉄柵の方へと移動した。

鉄柵に背中をあてがい座り、2人で暗闇を睨み付けた。

「どうした?」

ダリアンの悲鳴に、松明を持った牢番がやって来た。
松明の灯りで、牢の奥までうっすらと見えた。
小さな点が何個か白々と浮かび上がる。

「ひぃっ!」

ダリアンの口から声にならない悲鳴が上がった。
牢番が檻の奥の方を照らすかのように、わざと松明を柵に近づける。
小さな黒い塊はそれを避け闇へと素早く逃げていった。

「まぁ、そう嫌うな。今に友達になるさ」

牢番は本当に愉快というように笑った。

「ネズミと友達ですって?ありえません!」

いや、1人でここに長い年月いたのなら、それも十分にありえる。
正常な精神など長くは保てまい。
現に通路の奥から聞こえてくる、微かな呻き声や息遣いが、何よりも多くのことを物語っているじゃないか、とダリアンは思った。

入り口の方が明るくなった。
誰かが松明を持ってやって来た。

「こっ、このようなところに何かご用でございますか?!」

牢番はそう言いながら、慌てた様子で駆け戻った。
そして困惑した表情で訪問者を招き入れた。




作業用BGM  Haw Sa―Maria
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

処理中です...