文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

力尽きて運もツキた

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暗い空が見える。
四方は切り立った崖だ。
あの宙に浮いた感覚は……もしかして、あそこから落とされたんじゃないだろうか?
斜面を転がり落ちて、背中や腰を打ったのかもしれない。

寝ているときに聞こえた会話が甦る。

おばさんに落とされたんだ。


金貨が欲しくて?

お金が欲しくて?

最初からそのつもりで、私に優しくしてくれたの?

騙されたのか。
バカだな、ここは異世界なのに。

シミズのそっくりさんにも置いていかれ、今度はお金取られて崖から捨てられて……

結局、モブキャラはモブキャラのまんま、終わるってことか。

笑える。

痛い……。

胸も打ったかな。

胸の辺りがムカムカする。

凄く苦しくて感情がゴチャゴチャで吐きそう。


込み上げてくる吐き気に耐えられず嘔吐した。
吐く度に背中が痛んで苦しい。

嘔吐と嗚咽を繰り返した。
発作のように横隔膜が痙攣している。

ひととおりのものを出しきり、やっと落ち着いてきた。
口元を拭いたいけど、それも出来ない。
今度こそオオカミの餌だ。
引き裂かれながら死ぬのは、相当キツいだろうか……その前に出血多量とかで死にたいな。
死ぬのは怖いけど、それで元の世界に戻れるかな?
だったらいいな。

もう、こんな危ない世界はうんざり。
ほんの数日過ぎただけなのに、何年もいるような気がする。


ユージンを初めて見たときは、あんまり綺麗な寝顔だったから見惚れちゃったな。
私のせいで大事な太刀を手放して、揚げ句に追われる身にさせちゃった。
何度も助けられて、この世界で最初に出会ったのがユージンで運が良かったのは私のほうだ。
ユージンと出会ってなかったら、本当にどうなっていたことか。

ニマはあんなに殴られて、痛かっただろう。
よく、あの遠い道を歩けたね。
私はどこも怪我してないのに文句ばっかり言って。

ニマのお母さんは優しかった。
見ず知らずの私達をもてなしてくれて。
ニマが盗みを働くぐらいだから暮らしは楽じゃなかったはず。
なのに、大事な鶏を惜しげもなく食べさせてくれたんだ。

みんなごめんなさい。
そしてありがとう。
直接謝れなくてごめんなさい。


ユージンどうか無事でいて。


――――帰りたい。

月明かりの下で再び目が覚めた。
さっきと何ひとつ、状況は変わっていない。

足元にランプが転がっていた。
金銭的価値がないってことで私と一緒に捨てられたんだね。

ああ、ウケる……。



第2章       了



作業用BGM  SVT―Left & Right

―――――――――――――――――――――――

ここまでお付き合い下さりありがとうございました。次は再びダリちゃんのターンです。
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