文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

誰かの幸運は誰かの不運

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「でも、すぐに行きたいんです」

おばさんは少し難しい顔をしてから微笑んだ。

「……そうかい。じゃあ夫が戻ったら近所から荷車を借りてもらうから、そしたらすぐに出発しようか」
「はい、ありがとうございます」
「さぁ、おかわりはどうだい?」
「もう、大丈夫です」
「だったら、お茶でも飲んでゆっくりしてなさい」
「はい、ご馳走様でした」

ハーブティーの香りがするお茶はあまり美味しくなかったけれど、出された手前我慢して全部飲み干した。

お腹がいっぱいになって眠くなってきた。

「隣の部屋で休んでるといいよ。可哀想にひとりで不安だったろう」

私はおばさんの言葉に甘えて、隣の部屋で横になることにした。

遠くで人の声が聞こえる。

「本当か?」
「本当だよ、金貨だ。それも1枚や2枚じゃないんだから」
「あんな子供がどうしてそんな大金を?」
「だろう?聞けば連れとはぐれたって、だからひとりでラシトに行くって言うんだ」
「なら、ちょうどいいな」
「そうなんだよ、こんな幸運はないよ」
「とうとう俺達にも運が回ってきたか」
「ああ、そうさ」

頭の上の方に人の気配がする。
凄く眠くて起きられない。

「どこにある?」
「黒い服のポケットだよ」
「大丈夫か?」
「平気さ眠り茸のお茶を飲ませたからね、当分起きない」

ポケットの中に誰かの手が入った。

「本当だ、凄いな」
「飾り物も、豪華だった」
「それは、どこだ?」
「その袋の中じゃないか?」

何してるんだろう……起きた方が良さそうなんだけど、とにかく瞼が重くて開けられない。

さっきから地面が揺れている気がする、気のせいかな。とにかく本当に眠い。

「この辺でいいか?」
「良いだろう、この辺りなら誰も来やしないさ」

遊園地のグルグル回る乗り物に乗っているみたいに、体が宙に浮いたり落ちたり、いつ止まるのかなって思うくらいその状態が続いて。

止まったらまた眠くて眠くて―――――。



あまりの痛さに目が覚めた。

まず草が目の前にあった。
そのすぐ先は藪とたくさんの木の幹が見えた。
木の幹には蔦が絡まり、まるで緑色の鱗が生えているみたいだった。
辺りは暗く虫の声がする。

起き上がろうにも手が動かない。
後ろ手に縛られている?。
足も同じように縛られているんだろうか、動かなかった。
どこと言わず全身が痛い。

これはどういうこと?
何が起きたの?
おばさんの家で寝ていたはずじゃない?

体勢を変えて辺りの様子をみたいけど、少し動くだけで背中や腰が酷く痛んだ。

頑張ってかろうじて顔だけを上に向けられた。

どこ、ここ……



作業用BGM  EXO―Monster
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