文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

豆のスープは定番メニュー?

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おばさんが怖い顔をして立ち上がった。

「あんた、そんな物をそんなふうに見せるもんじゃないよ」
「あの」
「ちょっと、家に入んなさい」

おばさんは辺りを見回して、私の背中を押した。

「さぁ、そこに座って。今、お茶でもいれるから。お腹はすいてないかい?」
「ああ、そうですね……」

空いてないこともなかった。
朝、お爺ちゃんにご馳走になったスープはもう完全にどこかへ消えている。

「すぐに用意するよ。安心しな、うちには誰もいないから、ゆっくりしなさい」
「あの、それではお言葉に甘えてお願いしたいことが……」
「なんだい?遠慮しないで言ってごらん」
「お部屋をお借りしてもいいですか?着替えをしたくて」
「なんだ、そんなことかい。隣の部屋を使いな。夫は畑に行ってるから昼まで戻らない」
「ありがとうございます」

文化祭の衣装に着替えることにする。また夜を外で過ごすことになるかもしれない。

家具らしいものはひとつもない、部屋の隅に布団らしきものが畳んで積んであるだけのガランとした部屋だった。

着替え終わったアイシャさんの服とアクセサリーを巾着の中にしまった。
部屋を出ると、絨毯の上に広げられた布の上に薄いナンと、スープの入ったお椀が用意されていた。

「おや?変わった服だね」
「ええと……友達が作ってくれたんです」
「そうかい、イルファンじゃ、そんな服が流行ってんのかい」
「友達のセンスは独特なんで……ハハハ」

スープの具は豆と野菜だった。
お爺ちゃんに教えて貰ったように、ナンを割ってお椀の中に入れた。
さっぱりとした塩味で少し酸味があった。

「キャラバンはこの辺りを通らないんだよ」

お茶を入れた小さなお椀を差し出しながら、おばさんがすまなさそうな顔をした。

「そうなんですね」
「明日、街まで連れていってあげるよ。街ならキャラバンが滞在してるかもしれないからね」
「あぁ、でもご迷惑でしょう」
「大丈夫、ちょうど用事があるんだ」
「あの、でも先を急いでいるので、道を教えて頂ければ大丈夫です」

ラシトまでどれくらいかかるのかわからない。
だから無駄に立ち止まりたくはなかった。

「ひとりで行くってのかい?山をひとつ越えなきゃならないんだよ?山賊にでもあったらどうするんだい」
「山賊?そんなのが普通にいるんですか?」
「そりゃ、いるだろう。悪いヤツはどこにだっているじゃないか」

すぐにシミズ(悪人)の顔が浮かんだ。

「でも、早く行きたいんです」




作業用BGM  Weki Meki―Crush
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