文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

アガル感触

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川岸の岩の間に、ニマのお母さんが作ってくれた巾着が引っ掛かり浮いているのが見えた。
私は橋を駆け渡り、土手を下り川の中に入っていった。

早くしなくちゃ、流されちゃう!

上から見たときにはそんなに深くないと思っていたのに意外に深い。
膝下まで水に浸かり、流れに逆らい歩くのはなかなか簡単じゃないな。

そして、ようやく巾着を手に掴んだ。

巾着の口を開き中を確認すると、ランプと衣装はちゃんとそのまま入っていた。

水から上がり岩の上に黒いベストを広げ、祈りながら手を入れた。

どうか、ありますように……

「あった!」

金色に光るブツがちゃんと掌にある。

どうして、こんな所に落ちていたのか?
シミズ(嫌なヤツ)に何かあった?
……いや、正直あんなヤツどうでもいい。

私の大事なお金が戻ってきたんだから、素直に喜べばいい。

衣装をしぼり、岩の上に広げて乾す。
私は木陰に座りランプをじっくりと眺めた。
やはり、どこかの国の工芸品かお土産程度の細工にしかみえない。

きっとシミズ(もう会いませんように)はゴミだと思って捨てたんだな。

強い日差しと乾燥した陽気のおかげで、衣装はあっという間に乾いた。

巾着袋の切られた紐を結び直し、衣装とランプをしまった。

「さてと」

川原を歩いて土手を上る。タンポポに似た花ががたくさん咲いていた。
土手を上がり村へ入った。
民家は木材と泥で出来ていて、外側は白く塗られている。赤や青色のカラフルな扉が目立つ。
窓には板張りの扉がついていて、どこも開け放たれていた。

家の前で何かの作業をしている女の人がいた。
近づいてみると、ザルに入った豆を選別しているようだった。
女の人はそれに集中しているのか、私が近づいても気づかない。

「あのぉ」

声をかけると、女の人がびっくりしたように私を見た。
お母さんくらいの年の人で、日にやけて逞しい感じだ。
カラフルな色の服を何枚か重ねて来ている。

「あのぉ、ちょっとお聞きしたいんですけど、あっ怪しいものじゃないんです」
「……この辺じゃ見ない顔だね」
「ええ、まぁ。旅をしてまして……」
「お嬢ちゃんひとりでかい?」
「連れがいたんですが、はぐれてしまったんです。それで、家に帰りたいので方法を探してます」
「うちはどこなんだい?」
「イルファンのラシトです」
「あんた、イルファンの人かい?」
「そういうわけでは……」
「……」

不信感を思いっきりあらわにした目で見られている。
まぁ、そうだよね。

「あのお金ならあるんです」

私はポケットから金貨を取り出して見せた。

「羊飼いのお爺さんに、キャラバンに連れていってもらえって言われたんです。キャラバンはこの近くを通りますか?」

「あんた……」

おばさんが立ち上がった。




作業用BGM  DREAMCATCHER―Chase Me
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