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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
魔神の名前を言ってみてテイク2
しおりを挟む私はお爺ちゃんのロバに乗り、モフモフ達の移動についていった。
お爺ちゃんの馬はゆっくりのんびり歩くので、繋がっているこちらのロバもゆっくりトコトコと歩く。
馬より小さなロバは揺れが大きくて、乗り心地はそんなに良くない。
日が登りまだ気温が上がる前に、荒野だった景色が変わり始め、今はなだらかな起伏の草原を進んでいる。地面には緑色の草が生え、モフモフ達は草を食みながらのんびり歩く。
前方には緑に覆われた山の連なりが見えていた。
「あの山んなががぁ、バルフの王宮だわぁ」
お爺ちゃんが、木の棒で山の連なりを指した。
ひと際高い山の上に、城壁で囲まれた城のような建物が見えた。
尖った三角屋根の塔が2つ、剣のように飛び出している。
大きな川に架かる橋の前でお爺ちゃんとお別れすることになった。
「この橋を渡ればさぁ、大きな村があるけぇ、誰が街まで行ぐもんに付いてげばよぉ」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
「んじゃ、気ぃづけね」
「あっ、あの!もしかして、魔神の名前をご存知ですか?」
知らないだろうと思ったけど一応聞いてみた。
モフモフ達はお爺ちゃんを置いて歩いていく。
お爺ちゃんは空を仰いでから、思い出したように答えた。
「そりゃあ、ぃえすぶれぇとぉ、だわぁ」
「エスブレート?」
「ぃえすぶれぇとぉ!」
ん、なんかそれっぽくない?
でも濁音じゃなかったような……。
「ヤスブレート?」
「ぃえすぶれーとぉ」
もういいや。わからん。
ヒヤリング出来んわぁ。
私はお爺ちゃんに手を振って橋を渡った。
もしもシミズ(ぬすっと)を見つけたら、すぐにランプを返して貰わなきゃ。
まぁ、すんなり渡すとは思えないけど。
髪の毛が束で落ちたときの音を思い出し、身震いする。
「うっ、思い出したら気分が悪い……」
私は橋の上から下の川面を覗いた。
でも、なんであんなゴミランプを持っていったんだろう。
何の役にも立たないのに。
「それにしても綺麗な川だなぁ」
眼下の川は浅く緩やかに流れている。
透き通った川の底は白かった。
小さな花をつけた若草色の水草が水面下で揺れている。
今にも河童が流れてきそうだな。
静かで穏やかな流れに暫く癒されていると、何やら見覚えのあるものが、プカプカ浮いているのに目がいった。
「えっ!」
えっえっえっ!ちょっと待って!
あそこの岩に引っ掛かってるのって……
私の
ランプじゃ?!
作業用BGM The Boyz―REVEAL
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