文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

誰かに裏切られるのは2度目です

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「放っておけと言っただろ」
「えっ?」
「泣くのを止めろと言ったら、放っておけと」

ああ、そういえばそんなことを言ったような気もする。
えっ、まって、それに素直に従ってたわけ?それとも気分を害したから、だから意地であんまりしゃべらなかったってこと?

「まぁ、確かに言ったかもしれないけど……でも、今はちょっと気の利いた言葉が欲しいっていうか、なんか黙ってこうやって顔付き合わせてんのも、気まずいかなって思ったし?」
「どっちなんだ……」

シミズのそっくりさんが立ち上がった。

「どっちって、なにが?」

私もつられて立ち上がった。

「放っておけと言ったり、話せと言ったり。お前は一体なんだ?俺の主か??偉そうに、アイツの犠牲の上だと?勘違いするな、お前が今ここにいるのは、俺の善意の上だ。罪悪感?そんなもんはねぇ、むしろ厄介者を押し付けられてめんどくせぇしかねぇっつうのにっ!」

シミズ(違うけど)が物凄い勢いで捲し立ててきた。

「そっ、そんなに怒んなくたっていいでしょ、びっくりするじゃん。ただちょっと話せばお互いに分かり会えて、この先気分良く行けるかなって思っただけだし」
「うるせぇ、ゴチャゴチャ。それ以上何か言ったら井戸にブチ込む」

シミズ(本当の名は?)がズンズン寄ってきた。あまりの迫力に私は後退り壁にぶつかった。

「よこせ」

シミズが私の背中の巾着を掴んだ。

「ちょっと、何すんの?!離してよ!!」

シュンっ。

耳元で空気が唸った。
音の後に何かがパラパラと降ってきた。
えっ、ちょっと待って。
いつのまにかシミズ(悪)が、私の巾着袋を持っていた。紐が切られている?
彼は小さなナイフを鞘に納めていた。

「ウソ……」

砂の上に、髪の毛が束になって落ちていた。
まさか、これって私の??
何が起きた……の?

「俺はもう行く」

えっ?どういうこと??
シミズ(人でなし)が小屋を出て行く。
あっ、ランプ、ランプが……取り返さなきゃ……
頭のどっかで分かってるんだけど、私は突っ立ったまま動けなかった。
馬の駆ける音が遠ざかり聞こえなくなってからやっと息をつく。
恐る恐るポニーテールの毛先を触ってみる。
確かに砂に落ちた分だけ少なくなってるかもしれない。

「あいつ……」

怒りがフツフツと沸いて来る。
怒りが大きくなって恐怖の縛りが解けた。
私は小屋から飛び出し、シミズ(傷害罪と窃盗で訴える)の姿を探した。
豆粒程の馬の姿が地平線の彼方にかろうじて見えた。

「ふざけんなぁー!ここで死んだら、祟ってやるからなー、三代先まで祟るからなー!絶対に許さないからっ!!!」




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