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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
無口な人なら馬の方が良い
しおりを挟む「本当にリュトンの巫女なのか?」
「さあね」
確かにランプは持ってるけど、今まで魔神様に出て来て頂いたことは1度もないです。
正真正銘、ただのランプ。
またはゴミ。
「ヤツのハッタリか……」
ユージン、また会えるって言ったよね。
どこに行けば会える?
(ラシト……)
そうだ、ニマにラシトに来いって言ってた。
「ねぇ、ラシトってどこ?」
「ラシト?」
「そう」
「イルファンの西端の?」
「他にもあるわけ?」
「いや」
だったら、こっちの人間じゃない私に聞かないでよ。もしかして、シミズ、もとい、シミズに似たこいつって田舎者なんじゃない?
よくあるじゃん、交番で道聞いたら全然知らなくて実は地方から来たばっかりで、みたいな。
チっ、田舎者のクセに偉そうに。
よし、バルフに着いたらすぐにラシトに行こう。お金ならたくさん持ってるもんね。
目的が決まれば、気持ちも決まる。
どれだけ遠くったって大丈夫。
「お前、どこから来た?」
シミズのそっくりさんは、私のランプと私が本当に巫女かってことに重きを置いているらしいからな、正直に答えない方が良さそう。
「私、記憶喪失なの」
ちょっとうつむき加減で、不幸さを演出してみる。
「キオク……ソ……なんだそれは?」
「何かのショックで今までの記憶が一時的に失くなるの」
「……」
チラ見したら、まったく信じていない目で見られてた。
まぁ、そうだよね。ははは。
「だから、自分が誰で何処の人で、何をしていたのかひとつもわからないの」
心を強く持って訴え続けよう。
「ユージンと会う前のことはまったくわからない……ユージンだけが頼りだった……」
「……」
「……のに……」
チラり。
最早、彼は外を見ている。
話、まったく聞いてない。
「あの、彼は大丈夫だよね?」
「……」
「ちょっと、あなたに話してるんですけど?」
彼が面倒そうに私の方を向いた。
あっ、こういう表情とかシミズに激似。
「あなたと私の他には、外にいるお馬さんしかいないでしょ、アーとか、オーとか、返事してよ。完全に独り言じゃん」
「さぁな」
「えっ?」
ああ、さっきの私の投げかけに対しての答えか、って、時差すごっ。
「さぁなって……罪悪感とかないわけ?」
「罪悪感?」
「だって、あの場をユージンに任せて、私達は無事に今ここにいるわけでしょう?つまりは、ユージンの犠牲の上にあるわけ」
ギロリ、大きな目が私を射るように動いた。
これはシミズにはない凄みというか、冷たさというか。ちょっとビビる。
「……で?」
「ええと……だから、気休めでも言ってくれたらなぁって、思っただけです。彼なら大丈夫、きっと無事だろう……とか?」
作業用BGM A.C.E― I FEEL SO LUCKY
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