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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
別れは突然やってくる
しおりを挟む「全員綺麗に片付けるべきだったな」
シミズが片膝で弓を構えた。
その間に私はユージンを引っ張り岩影に隠れた。
ビュン、ビュン、ビュンとシミズが続けて矢を放った。
全てに手応えがあったようで、バサリと人が倒れる音が放った矢の本数分聞こえた。
シミズ無茶苦茶弓の名手じゃん。
シミズが私達と同じ岩影に逃れてきた。
「お前に頼みがある」
次の矢を用意しているシミズの肩にユージンが手をおいた。
「頼みだと?」
「俺はお前の命の恩人だろ?ここで死んだら忘れ物も取りに帰れない」
「お前はともかく、俺は死なない」
「そうだろ、だからこいつを連れて逃げてくれ」
えっ、突然何を言い出すの?
「足手まといだ」
そうだ、断ってくれていい。私はユージンから離れないんだから。
「こいつは聖なる巫女だ。リュトンを持っている」
「なんだって……」
「そんなはずはないか?」
「当たり前だ。リュトンはバルフにある」
「もし、それが2つ存在するとしたら?」
「バカを言うな」
ビュンっ。
シミズが矢を放った。
バタン。面白いように人が倒れる。
「ツキ、こいつと一緒に行け」
「やだっ、絶対に!」
「だそうだ」
「こいつは、無愛想だか、身元ははっきりしたヤツだ。悪いようにはならない」
「やだ!私はユージンの女神でしょ!女神を手放したら……毒だって……どうなるか……」
ふわっと、ユージンの腕が私を包んだ。
ギュッと抱かれる。
「大丈夫、毒に耐性がある。だけどお前まで守れるかどうかわからないんだ。頼むから行ってくれ」
「……やだ」
「ここは俺に任せろ、急いでやることがあるんだろ?」
「まぁな、じゃあそうするか。すぐに死ぬなよ、時間を稼いでくれなきゃ困る」
ユージンが私を離そうとするから、私はユージンに抱きついたまま離れなかった。
「俺と一緒に来い。こいつの言うことは正しい、1人なら切り抜けられる可能性はある。残りはたいした数じゃない。お前がいると可能性が低くなる」
私はシミズに引き剥がされた。
「行くんだ、また必ず会える」
シミズが弓と矢をユージンに渡した。
「矢の数はぴったりだ、外すなよ」
「……了解」
ユージンが弓をつがえた。
私はシミズに引きずられて馬まで走った。
足手まといと言われればそれまでだ。
私のためにユージンが死ぬのは嫌だ。
どうやって馬に乗ったのかはわからない。
シミズに引っ張りあげられたか、担がれたか。
気付けば私はシミズと一緒に森を抜け砂漠のド真ん中を走っていた。
雨はいつのまにかやんでいた。
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