文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

オオカミよりも怖い人

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「何もしなければ死ぬ」
「お前は……誰だ?」

男はしゃがんで顔を覆っていた布をずらした。
ユージンがフッと笑った。

「お前か……昨日の」
「覚えていてくれたとは、嬉しいね」

えっ、ちょっ、ちょっ、

「ちょっと待って、シミズ……だよね?!ユージン、シミズのこと知ってるの???」

切れ長の大きな目、少し暗い茶色の瞳。
間違いなくシミズだった。
正確には、痩せて凄みが増したシミズだ。

「シミズ……?名前までは」
「その辺でイルファンの兵士を何人か切ったがお前を追ってたんだな。盗賊」
「盗賊?違うよ、見た目はあれだけど、悪い人じゃないよ!!それより兵士を切ったって、殺したの?そっちの方がよっぽど大問題だよ、殺人だよ??」
「……ダリアンはどうした?」
「お前には関係ない。何故名前を?……その名を気安く呼ぶな」
「ねぇシミズ、ユージンと何があったか知らないけど、助けてよ。毒なら解毒剤とか何か方法があるんでしょう?さっき、何もしなかったらって言ったよね?だったら、助ける方法があるんだよね?」
「……お前、こんなガキにまで手を出すのか、見境のないヤツだ」
「手を出すって、変なこと言わないでよ(恋愛対象外だし)こうなったのも、私のせいなの!」

シミズがそこで、初めて私の顔を見た。
じっと何も言わずに、何か考えているようだった。

「お前達に、構っている暇はない」

シミズが立ち上がった。

「……何処へ行く?随分急いでいるな」
「バルフに行く」
「何故、主を置いて戻る?お前が唯一の護衛だろ?」
「……戻る?俺は戻るとは言ってないが、お前、何を知っている?」
「ダリアンがバルフの王女ってことだけだ。勘ぐるな」
「あの日外出したのは王女様ではない」
「そうか……じゃあ、お前の女だな」

サッ、と空気を切る音がした。
ユージンの喉に剣の切っ先が突きつけられている。

「今すぐ、楽にしてやる」
「ちょっとやめてっ!!」

さっきから、2人の話している内容が全然見えてないけど、めちゃくちゃ仲が悪そうだってことは把握出来た。

「お前と話していたら、少し具合が良くなってきたぞ」

ユージンが不適に笑った。

「ユージン大丈夫なの?」
「思ったよりしつこいな」
「えっ?」
「じゃあ、忘れ物でも取りに帰るのか?だったら急いだ方がいい」

ドンっ、と突然ユージンが私を突き飛ばした。
シミズも突き飛ばされ、ユージンと2人で地面に転がった。
ヒュンっ、と聞き覚えのある音がした。
見るとシミズがいた場所に矢が刺さっている。

「クソっ◯◯◯!」

シミズか何やらわからないことを口走った。
それがかなりの暴言だということは、まぁ想像がついたけど。

「全員綺麗に片付けるべきだったな」

シミズは素早く起き上がり、片膝で弓を構えた。
その間に私はユージンを引っ張り岩影に隠れた。

ビュン、ビュン、ビュンとシミズが続けて矢を放った。

それから、私達と同じ岩影に逃れてきた。




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