文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

森の中のレストラン

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「悪い、もう少し頑張れ!」
私は後ろから抱え込まれている状態だと思う。
じゃなきゃ、とっくにすっ飛ばされてる。
ユージンが馬の腹を何回か蹴った。
馬は更にスピードを上げて、その直後、宙にふわりと浮いた。不思議な浮遊感だった。
ほんの1秒とか2秒とかそんな短い滞空時間。
ガクン、ガクン、何度かお尻が浮いて、また走り出した。
何かを飛び越したみたい。
暫く走ってユージンは馬を止め後ろを振り返った。
私もユージンの脇下から後ろを覗いた。
追っての馬が1頭、藪にはまってもがいていた。他の馬は籔の手前でウロウロ立ち往生している。

「あそこには野茨が群生してるんだ。天然の柵ってところだな」
「ノイバラ?」
「野生の薔薇でトゲが鋭い。あの馬には可哀想なことをしたな」

追っ手が諦めたらしいのを確認し、ユージンはまた馬を走らせた。
森の中をどんどん進んでいく。

「少し休もう」

ユージンがやっとそう言ったのは、日が落ちて暗くなってからだった。
跨げるほどの小川の前に馬を繋ぎ、水を飲ませた。森の中はシンと静まっている。
ユージンが落ちている枝を拾ってきて火を着けた。私も燃えそうな枝を集めるのを手伝った。
枝を抱えて戻ると、ユージンは木にもたれて眠っているようだった。
私は火の側で時々枝を追加したりして、火が消えないように番をすることにした。
どのくらいそうしていたんだろう。
いつのまにか、私もウトウトしていた。
頬にポンと何かが落ちてきた。
雨粒だった。木の葉に雨粒があたる度にポンポンと音がする。
私は巾着からニマのお母さんから貰った布を出して頭から被った。
ユージンはまだ寝ている。
ユージンの頭にも、ポツポツと雨粒が落ちている。私は布を広げてユージンの頭にそっとかけてあげた。
その時、背後で何か聞こえた気がした。
追っ手だったらどうしよう。
私は音のした方に目を凝らした。
何かが木々の間にいる。
動物かもしれない、それも出会っちゃいけない危険なやつら。
気配からして1匹や2匹じゃなさそうだ。

「ユージン……」

私はユージンを呼んだ。
これはとても不味い事態じゃないだろうか?

「ユージン!」

なんで起きないの?
酔ってもいないのに?
私はユージンの肩を揺すった。
熱い……肩が、体が熱くない?
ダラン、とユージンの手が地面に落ちた。

「どうしたの?ねぇ」

顔を触ると物凄く熱い、熱がある?
一体急にどうして?
黒い集団は、もうすぐそこまで来ていた。




作業用BGM  TOO―Magnolia
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