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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
扉を叩くのはいつかのあいつ
しおりを挟む薄紫色のズボン、上に同じ色の袖のない上着、その襟はボートネックで喉元に縦のスリットが入っている。丈は長く膝下まであった。
アイシャさんの手直しが終わったところで、一緒に置いてあった同色の長い帯みたいなものを手渡した。どうやって使ったらいいのかわからず、最後に残ったやつだ。
「これはねぇ、こうやって巻くの」
アイシャさん、その帯で容赦なく私のウエストを締め付けてくれた。
「さぁ、次は髪を結いましょう!」
アイシャさん、なんだか楽しそうだけど、私は着なれない服だったし、ちっとも楽しくない。
(ユージンとはどういったご関係なんですか?)
さっきからそれだけを聞きたかった。
だけど、私こそ誰なんだ?っていう話だよね。
髪の毛は濡れたままひとつに括られた。
最後に唇に紅を指され終わり。
「さぁ、出来た。鏡を……」
重い手鏡を渡された。
「アイシャ!!」
鏡を見る前に、ユージンが駆け込んで来た。
「裏門を開けてくれ!」
表の方で何やら騒がしい声がする。
「おいっ、誰かいるか!開けろ!」
ドンドン、扉を叩く音がやけに乱暴だ。
「今度は何をしたの?」
アイシャさんが慌てて私の服を巾着袋にしまう。
「裏の門は開いてる、馬を使って」
「いいのか?」
「主人には言っておく」
えっ、主人て、アイシャさん人妻ってこと?!
「ありがとう。ツキ行くぞ……」
と言いかけて私を見たユージンがちょっと驚いた顔をした。えっ、やっぱり変?だったかな?
「行こう!」
アイシャさんにまだ覗いていない手鏡を奪われ、代わりに巾着袋を渡された。
ユージンはこの家を良く知っているようで、いくつか部屋を抜け、長い廊下を当たり前のようにズンズン歩いて行く。廊下の突き当たりに扉があり、そこを抜けると入った時とはまた違う庭に出た。
鶏が2、3羽ウロウロしている。
馬小屋があり、馬が何頭か繋がれていた。
ユージンはその中から黒い毛色の馬に鞍をつけ連れ出して来た。
「急いで」
ユージンが自分の手を組んで足場を作った。
馬に上るのは初めてなんだけど……
「鞍を掴んで上がれ」
えっ、大丈夫?馬怒んない?
鞍の出っ張った部分を掴んで、ユージンの手に片足を乗せた。
ユージンが押し上げてくれ、何とかよじ登りお尻を乗せる。なかなか上手く上れたわ、ほっとした所で、私達が出てきた扉が派手な音を立てて開いた。
「まずいな」
扉から兵士が1人また1人と入ってくる。
ユージンが腰の脇に手をやった。
「おやっ?」って顔してちらりとそこを確かめる。
そうだよ、飾りはさっき売っちゃったじゃん!!
「ユージン危ない!」
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